「反対だけど容認しか」「どうせ、と言われても」…辺野古県民投票2年、名護の20代が思うこと


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 【名護】辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票の投開票から24日で2年を迎えた。投票で有効投票の約72%が「反対」だったが、政府の工事強行が続いている。2年前「反対」に1票を投じた名護市出身の若者2人に、投票に込めた願いや、民意が尊重されない現状をどう見るか聞いた。

◆迷った末「反対」に 「国は住民の安全保障を」 新垣康大さん(26)

米軍キャンプ・シュワブのフェンス前で基地建設への思いを語る新垣康大さん=18日、名護市辺野古

 「移設には反対だ。でもどれだけ反対しても国が計画を止めないなら、容認するしかないですよね」。名護市の会社員、新垣康大さん(26)は、名護市辺野古への基地建設に複雑な心情を抱く。2019年の県民投票では、迷った末に「反対」に投じた。今もその思いは変わらないが、現実に折り合いを付けて「基地との共存」に目を向けるようになった。「国はもっと住民の安全を考慮してほしい」と望む。

 名護市世冨慶で生まれ育った。辺野古には友人も多く、中学時代は辺野古の海で一緒に遊んだ。高校時代にドイツ留学をした際、基地問題について聞かれたことをきっかけに、自分の言葉で基地問題を語りたいと思うようになった。名桜大学在学中の15年、若者が参加しやすい抗議活動を追求する学生グループ「ゆんたくるー」に参加した。ゲート前に毎週通い、米軍や抗議活動について学んだ。

 当時、ゲート前の抗議活動は現在より過激だった。一部の参加者が警備員と衝突し、辺野古区民と口論するのを目にした。その時、疑問が生まれた。「何と闘っているのか」。対立する姿に共感できず、抗議活動から距離を置いた。

 国は「辺野古が唯一の解決策」との姿勢を変えない。それなら基地建設を前提に、市民が暮らしやすくなる方法を考えた方がいいと思うようになった。県民投票については当初「蒸し返しても、もめるだけ」と感じたが、友人らと意見交換し「基地問題をあらためて考え意思表示する好機」と受け止めた。

 賛否いずれに投票するか悩んだ。「基地建設そのものをシンプルにどう思うか」。最後は自身に向き合い「辺野古に基地はいらない」との思いをよりどころに投票した。結果、国が「反対」の民意をくむことはなかったが、多くの人が基地移設を学び、考えたことは意義があったと感じる。

 辺野古には、家族を持ち米軍機が飛び交う将来を不安に思う友人もいる。国はただ計画を進めるのではなく、市民の安全を保障してほしいと願う。かつて岸本建男元市長が移設受け入れの条件に挙げた15年間の使用期限の再検討や、米軍に使用上のルールを設けることも必要だと考える。「そこに住む人のことを、もっと考えてほしい」と、言葉に力を込めた。 (岩切美穂)


◆署名活動に協力「基地建設について考える機会に」 渡具知武龍さん(23)

普天間飛行場が見渡せる場所に立つ、名護市瀬嵩出身の渡具知武龍さん=17日、宜野湾市の嘉数高台

 名護市瀬嵩出身の渡具知武龍さん(23)=西原町=は「ふるさとを壊すのは嫌だ」との思いを「反対」の一票に込めた。県民投票の実現に向けた署名活動にも協力し、県民が基地に向けるさまざまな視点を知った。「賛成・反対の全員の思いをくむ投票だったと思う」と振り返る。

 名護市辺野古の新基地建設計画が浮上した直後の1997年に生まれた。米軍キャンプ・シュワブ沖にある平島の、基地建設以前の風景が今でも目に焼き付いている。魚が泳いでいた周辺の海域も、コンクリートの護岸に覆われつつある。「辺野古の新基地建設は防衛や外交、経済の問題と捉える人もいるが、率直にここに基地ができるのは嫌だと思った」

 高校まで名護市で過ごし、2016年に琉球大学工学部へ入学した。法文学部に転籍して「新しいことに挑戦したい」と考えていた18年、県民投票実現を目指す「辺野古県民投票の会」の署名活動に誘われた。「民意を示す力になりたい」と協力した。

 県民投票の実現に向けて、名護市のスーパーなどで署名を呼び掛けると「どうせ反対派のやることだろう」と冷ややかな反応を受けることがあった。署名の意図を説明すると「自分は基地賛成だが、意見表明する機会は必要」と協力してくれる人もいた。県民投票では、賛成と反対の両方の立場にいる人たちが、それぞれの思いを込めた。「基地建設について考える機会になった」と実感する。

 一方で、県民投票がどれほどの効果を生み出せたのか見えにくいとも感じている。「自分は(名護市が)地元だったからこそ、ここまで関心を向けてきたと思う。半面、自分を守るために『われ関せず』の立場を取る人も少なくない」。それぞれの立場や生まれ育った環境によって、基地問題への関わり方に大きな違いがあると考えている。

 県民投票の署名運動やその後の住民訴訟などを経て、法律が生活の根幹に大きく関わっていることも実感した。弁護士を目指して、4月から琉大の法科大学院に入学する予定だ。「困っている人たちを法律で手助けしたい」と前を見据えている。 (塚崎昇平)