子思う親の愛、涙誘う 乙姫劇団の名作「チャー木の精」を上演 国立劇場おきなわ


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意気揚々とチャー木の伐採に向かう新里里之子(中央・玉城盛義)を見つめる亀寿(右・奥平瑠留)、驚きを隠せない妻・真鍋(伊良波さゆき)=13日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわによる芝居公演・時代人情歌劇「チャー木の精」(玉木初子作、嘉数道彦演出、瀬名波孝子演技指導)が13、14の両日、同劇場であった。女性だけの劇団として一世を風靡(ふうび)した乙姫劇団の名作を、花道など同劇場ならではの舞台設備を生かして上演した。子を思う親の愛が涙を誘った。13日公演を取材した。 (藤村謙吾)

 首里王府の道路開通計画により、国頭村のとある集落に生えるご神木のチャー木が伐採されそうになる。村頭(平良進)は村人と相談し、士族の新里里之子(玉城盛義)の力を借りてその場を収める。

 幕開け、タラー(玉城匠)とカマダー(山城崚称)、美童(廣山えりか、喜舍場香純、米盛未来、玉城知世、伊波留依)のにぎやかなやりとりが、村の楽しい暮らしぶりを感じさせた。村人役の瀬名波と伊禮門綾は、息もつかせぬせりふのやりとりで笑わせた。平良は村人に威厳を示しながらも、新里に助力を得る場面では視線を下に落としがちに語り掛けた。平良に呼応するように村人一同が平伏する場面は、新里の続く活躍に期待を抱かせた。

母・真鍋(チャー木の精・伊良波)にすがる亀寿(奥平)

 新里はチャー木を守り、人間の姿になったチャー木の精・真鍋(伊良波さゆき)と結ばれる。2人は息子・亀寿(奥平瑠留)を授かり、幸せな日々を送る。しかし首里で築城の計画が持ち上がり、チャー木の切り手に新里が選ばれる。真鍋がチャー木の精と知らない新里は、亀寿の出世のため、と伐採に向かう。

 別れを知らず母に抱かれ眠る亀寿の姿と、「母を思い出すときは、庭のチャー木を見て」と歌う真鍋の悲痛な姿が涙を誘った。伐採を終えた新里は、真鍋の真実を知り落胆する。それまではつらつとした声を響かせていた新里が、真実を知った後の「真鍋」のせりふからは深い悲しみの表情を声音に感じさせた。9歳の奥平のあどけなさは、亀寿を愛らしく感じさせた。別れを惜しみ母子で歌う「嶽富(たけとみ)節」にも努力の跡を感じた。

 伊良波はチャー木の精と人間を見事に演じ分けた。中でも「嶽富節」と、新里に自らがチャー木の精だったことを告げる「口説」の歌声の違いに顕著に表れた。

 ほか出演は宇座仁一、玉城靜江、真栄田文子、石川直也、山城亜矢乃、伊藝武士、髙井賢太郎、玉城慶、川満香多、上原崇弘。歌三線は新垣俊道、喜納吏一、新垣勝裕。箏は林杏佳、笛は大城建大郎、太鼓は髙宮城実人。

 1部で、舞踊2題と喜劇「お産と泥棒」(髙宮城演出)を上演した。