基地集中ゆえの苦難刻み25年 沖縄女性の性被害まとめる「行動する女たちの会」


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 米軍基地が集中する沖縄で、米兵によって繰り返される性犯罪。「軍隊の駐留でどれほどの人が苦しめられてきたか、掘り起こしたい」と四半世紀にわたり、女性の性被害を年表にまとめ続けている団体がある。日本の安全保障のために犠牲となり、虐げられてきた女性たちの苦難の歴史を伝えている。

【写真説明】米兵による女性の性被害をまとめた年表を手にする「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表の高里鈴代さん=那覇市

 「生後9カ月の赤ちゃんが、母親顔見知りの米兵に連れ出され、強姦(ごうかん)される 1949年」「10代の少女、父親と長兄の面前で米兵に強姦され、精神を病む 50年代半ば」「高校生が学校の帰途、3米兵にナイフで脅され、公園内で強姦される 84年」「20歳の女性、軍属によって強姦、殺害され、遺体で見つかる 2016年」

 目を覆いたくなるむごたらしい出来事が、1945年の沖縄戦で米軍が上陸した直後から連綿と続く。年表に書き連ねているのは、95年に当時小学生の女児が米兵3人に連れ去られ暴行された事件を機に発足した「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」だ。

 共同代表の高里鈴代さん(80)=那覇市=は95年の事件後、国内外のメディアに米兵の性犯罪件数を尋ねられたが、答えられなかった。72年の本土復帰以降は検挙件数の統計があったものの、婦人相談員を務めた経験から、訴えられずに埋もれた事件も多数あることを知っていた。

 そこで新聞記事や書籍を調べ、時系列に並べて冊子にした。完成したての初版を携えて翌96年2月、沖縄の女性らと訪米し実態を訴えると、「知らなかった」と涙を流す人もいた。その後も、米軍統治下の琉球政府資料や米公文書、県史を手掛かりに書き加え、初版でA4判6ページだった年表は、2016年発行の第12版で26ページに膨らんだ。

 今年2月にも、女性に無理やりキスをして下着を下ろしたとして米海兵隊員が逮捕された。被害は後を絶たず、年内に第13版を発行予定だ。高里さんは「暴力を伴う軍隊が駐留し続けることで、女性の人権侵害が繰り返されている。基地問題は人権の問題だ」と強調し、米軍の撤退を訴える。

 事件後に妊娠が分かって中絶した少女や、中絶できずに出産し養子に出した女性もいる。小学生で被害に遭った人が、年表を知って「私の証言も残してほしい」と連絡をくれたケースもあった。ただ、高里さんたちが把握するのは氷山の一角で、誰にも言えずに痛みや苦しみ、恐怖を抱えて生きている人が無数にいるという。「沈黙を強いられた人たちの存在を明らかにし、声を上げられる社会にしなければならない」と高里さん。これ以上、年表に刻まれる被害がなくなることを願っている。

(共同通信)