【深掘り】空自那覇基地の泡消火剤流出 有害性の説明不十分 識者が広報内容を問題視


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 航空自衛隊那覇基地で泡消火剤が漏出した2月26日の事故について、製造元の資料に、取り扱いに注意が必要だと記載されているにもかかわらず、空自は「毒性や損傷性はほとんどない」と広報していた。名桜大の田代豊教授(環境化学)は、泡を洗い流せば問題ないとする空自の説明に一定の理解を示しつつ「少なくとも触らないようにすることなどを呼び掛けるべきだった」と当日の広報の内容を問題視した。

保育園の敷地に付着した消火剤とみられる泡=2月26日午後5時10分ごろ、那覇市高良

 泡消火剤の有害性を記す安全データシートについて本紙は3月2日付で報じた。その日の午前、空自の関係者が那覇市役所を訪れた。有機フッ素化合物の一種PFOS(ピーフォス)を使っていない消火剤であることや、97%が水で3%が消火剤なので水で流せば問題ない旨を改めて伝えた。

 消火剤が漏出した2月26日、近くの保育園やモノレール駅構内、国道331号にまで泡が飛散した。空自は当日、泡が付着した保育園に対し、水で流せば問題ない旨を伝えていた。

 県内報道機関への発表文でも「PFOSは含まれておらず、毒性や損傷性はほとんどない」と述べ、接触や吸入の回避を呼び掛けるような言葉はなかった。

 一方、那覇基地で漏出して基地外に飛散した泡消火剤について、製造元の安全データシートでは「危険」と表記されていた。注意喚起の表現として「警告」よりも有害性が強い場合に使う決まりだ。

 有害性の区分は5段階のうち、最も注意が必要な「区分1」とされる項目が三つあった。(1)皮膚への接触によりアレルギー反応を誘発することを示す「皮膚感作性」(2)一度の暴露で臓器や全身に有害影響を表す「特定標的臓器・全身毒性(単回暴露)」(3)繰り返しさらされることで生じる健康影響を示す「特定標的臓器・全身毒性(反復暴露)」―の3項目だ。

 一方、県庁に設置されている他社の消火器や那覇市泉崎の琉球新報本社に設置された消火器の安全データシートを見ると、注意喚起は「警告」にとどまっている。化学物質である以上、取り扱いに注意が必要だが有害性に関して最も強い「区分1」はなかった。

 田代教授は「一般的に泡消火剤は燃料など油の火災に対応するためのもので、通常の消火剤よりも有害性が強い。その分、取り扱いに注意が必要だ」と説明した。その上で「今回の事例に限らず、化学物質の漏出などがあった場合に(関係機関は)『直接的な影響はない』と言いたくなる傾向にある。だが、本来は物質の有害性について慎重であるべきだ」と語った。

 PFOS以外の有機フッ素化合物が含まれているかどうかについて、空自は本紙の取材に「業者に問い合わせて」と答え、本紙は製造会社に問い合わせているが返答はまだない。

(明真南斗)