米軍機の低空飛行、愛媛や高知で20年度に急増 目撃情報3桁に【全国地方議会の意見書一覧】


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高知県長岡郡本山町で目撃された米軍とみられる航空機による低空飛行(筒井太雅さん撮影)

 衆議院に対して、米軍機による低空飛行訓練の中止を求める意見書の提出が急増した背景には、愛媛、高知両県で低空飛行の目撃情報が相次いでいることがある。在日米軍の低空飛行訓練ルート「オレンジルート」直下の両県では、以前から低空を飛行する米軍機が確認されていたが、2020年度は、両県ともに目撃情報の件数が突出して多かった。同ルート以外に係る地域以外での目撃も続いており、市民は不安を募らせている。 (安里洋輔)

 「戦争?」「怖い」。不安がる子どもたちの上空を、隊列を組んだ航空機がごう音を立てて飛び去る。今月3日、高知県北部の本山町で市民が撮影した動画だ。撮影した保育士の筒井太雅(たいが)さん(23)によると、この日は午前11時ごろから午後3時にかけて計4回、米軍機とみられる7機の低空飛行を目視したという。

 筒井さんは「最初はプロペラ付きの輸送機が3機、その後、戦闘機が計4機、地上すれすれを飛んでいった」と証言する。

 本山町は、和歌山県から徳島県、愛媛県へと通じる低空飛行経路「オレンジルート」の直下に位置する。1994年には米海軍の戦闘機が、同町と土佐町にまたがる早明浦(さめうら)ダムに墜落し、乗員2人が死亡する事故もあった。

 筒井さんは「米軍機の低空飛行は、最近頻繁に目にするようになった。また事故があったらと考えると恐ろしい」と声を震わせた。

 高知県危機管理部は、市民から米軍機の目撃情報を募り、中国四国防衛局に照会した上でホームページに掲載している。2014年度から18年度までは2桁台で推移していたが、20年度は3日時点で252件の情報が寄せられ、このうち193件の飛行について防衛局から回答を得た。20年度は従来と違い、県西部など、オレンジルートに係る北部から外れた地域でも目撃が相次いでいる。特に、輸送機らしき機体が多く確認されているという。

 愛媛県は、1994年の高知県での米軍機墜落事故を契機に、市民からの米軍機による低空飛行の目撃情報を収集している。これまで1桁から2桁台で推移していた件数が、2020年度は310件に激増し、最多を記録した。

 担当者によると、高知と同様に、オレンジルートから外れた南西部や南部など沿岸部でのプロペラを備えた輸送機の目撃が目立っているとしている。