上原武信さんを悼む 温厚、空手には厳しく 県空手道連合会会長・仲里稔さん


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沖縄空手会館の落成式典で奉納演武を披露する上原武信さん=2017年3月4日、豊見城市

 上原武信先生の訃報に接し、信じられない気持ちでとても悲しんでいる。先生とは、父の仲里周五郎(県無形文化財保持者、故人)が非常に懇意にしていた。先生はにこやかで、やさしいまなざしで語り掛けてくださった一方、空手の演武は眼光鋭く、迫力があった。温厚だったが空手には厳しく、外柔内剛なお方だった。

 空手を始めて50年ほどになるが、父はよく上原先生のことを「まじめで立派な人だよ」と話していた。私がお会いすると、上原先生にはよく「お父さんは元気か。君も頑張りなさい」と声を掛けられた。

 2018年、本部町で上地完文(上地流開祖)先生の銅像が完成したときにお会いして、空手や人生訓などについて長く話をした。最後にお会いしたのは今から1年ほど前の県空手道連合会の会合だったが、先生はいつものようににこやかに話されていた。

 元気でおられるなと思っていたが、最近になって体調を崩されているとお弟子さんに聞いた。ぜひお見舞いにと思っていたが、新型コロナウイルスのこともあり控えていた。

 先生は、まだ空手をやっていきたいと思っておられたと思う。知識も豊富で、さまざまなことを教えていただいた。それを胸に、先生たちが築いてこられた伝統空手を汚さないよう、しっかり引き継いでいきたい。安らかにお眠りください。本当に長い間、お世話になりました。
 (県空手道連合会会長、談)

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 県指定無形文化財「沖縄の空手・古武術」保持者で上地流範士十段の上原武信さん=那覇市=は2日、老衰のため豊見城市内の病院で死去した。91歳。