【深掘り】辺野古埋め立ての南部土砂採取の断念は可能か 県が根拠を模索 条例制定の可能性も


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具志堅隆松さん(右)から説明を受ける玉城デニー知事=6日午前、那覇市泉崎の県民広場

 名護市辺野古の新基地建設に関連して、本島南部からの土砂採取断念を求めて遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表が、県庁前で続けるハンガーストライキ最終日の6日、玉城デニー知事が自ら現場を訪れた。玉城知事は民意を後ろ盾に行動を起こそうと庁内での検討作業を加速させるのと並行し、政府に土砂採取の断念を求めていく考えだ。

 遺骨をより分け、混ざらないように土砂を採取すると言う業者の方針に対し、具志堅代表は「完全に取り除くことは物理的に不可能だ」と指摘。表土を取り分けても複数人の遺骨が混ざり、だれの骨か分からなくなるとも指摘し、「その土砂で基地をつくるというのは死者への冒涜(ぼうとく)だ」と改めて訴えた。

 玉城知事は「県民の深い思いが、行政にもつながっていないといけない」と語った。一方で、「具体的な形で見えている訳ではない」とも打ち明けた。

 現場に現れた玉城知事はジーンズとジャンパーの軽装だった。知事に近い関係者は「個人としての訪問」だと強調し、「公務で行くと、答えを持っていかなければならなくなる。(訪問は)『頑張って手だてを探している』と伝えたかったからだ」と説明した。

 県庁内では「あらゆる方策」「(考えられる)全部」を視野に、対応を検討している段階だ。自然公園法33条2項の措置命令について、いくつかの課題を乗り越えられるかどうかを議論している。

 全国で事例がないことなどを理由にハードルの高さを指摘する意見も県庁内に強かったが、採掘予定地は全国で唯一の戦跡国定公園であり、それを根拠に全国初の措置を取り得るとの意見も出てきた。

 自然公園法が定める遺骨の存在が、「風景」に当てはまるかどうかも問われる。地元の糸満市は慰霊塔などが近くにあることから「歴史の風景として保全を図る必要がある」と指摘しており、県は市の意見書も考慮に入れて審査する方針を示している。

 自然公園法に基づく措置命令に踏み込む場合、現在は業者が出した開発届を受理してから30日以内に判断しなければならず、素早い検討が必要だ。

 県議会一般質問でも連日、与党から県の対応を求める声が上がり、玉城知事も「非常に胸に迫るものがある」など心情を吐露する場面が増えた。県民世論の高まりを受け、措置命令の根拠か、他に止める手だてがあるのかを早急に示す必要に迫られている。

 具志堅代表らの要求事項にも入っていた、南部地区からの土砂採取を規制する条例制定の案も、検討が進む可能性がある。知事に近い関係者は「県民の思いをないがしろにしている、政府への働き掛けも強めなければならない」と語った。

 (明真南斗)