【深掘り】沖縄にも少子化の波、着実 1月人口が初の自然減 県推計 コロナ禍で拍車の恐れも


社会
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 県統計課がこのほど発表した2月1日時点の県内推計人口統計で、今年1月中の出生数から死亡数を引いた数「自然動態」が、44人のマイナス=自然減となった。県統計でさかのぼれる1995年12月以降、自然減となった月はなく、それまでの出生数の高さを考えると戦後でも初めてと見られる。出生減と死亡増が重なった単月だけの現象という可能性があるが、県内でも少子高齢化が着実に進み、人口増の勢いに陰りが出ている現状を浮き彫りにした。新型コロナウイルスの感染拡大で社会経済の不透明感が増せば、出生数の減少に拍車がかかるという専門家の見方もある。

 今年1月中の死亡数は1242人(前年同月比35人増、前月比206人増)と跳ね上がったのに対して、出生数は1198人(前年同月比138人減、前月比48人減)と減少し、死亡が出生を44人上回った。

 一方で、沖縄県への転入者と転出者の差を表す「社会動態」は335人の社会増(転入超)だったことから、人口全体では前年同月比で3555人(0・24%)増、前月比で291人(0・02%)増の146万718人となり、人口増が続いている。

■進む少子高齢化

 1月だけで見れば出生数と死者数の逆転による自然減が生じたものの、元々冬場は死亡数が高まり、自然増の幅が小さい傾向がある。今年は出生数の減少と死亡数の増加が同じ月に重なったことで、瞬間的に自然減となった可能性もある。

 翌月以降も自然減が続くかどうかは、しばらく推移を見極める必要がある。とはいえ、合計特殊出生率が全国一高く、人口増加が続いている沖縄も、日本全体と同様に、近い将来に人口減少の局面に入ることは既に予測されている。

 これまで沖縄県は毎月、3桁の自然増で推移してきたが、増加幅は緩やかに縮小してきている。95年12月は837人の自然増だったが、2020年は2月に24人増、3月に69人増にとどまる月があった。

 団塊世代が75歳以上の後期高齢者になるなど社会の高齢化に伴って死亡数が増加傾向にあるのに対し、出生数の減少による少子化が進んでいる。

 沖縄大の島村聡教授(社会福祉)は、1カ月の動態だけでは長期的な視点とずれる可能性があるとした上で、1月中の自然減について「県外に比して緩やかだが、高齢化の影響に加え、少子化が着実に進んでいることが強いメッセージとして示された」と指摘する。

■那覇市の婚姻届減

 島村教授は、少子化の要因は婚姻数そのものが少ないこととした上で、低賃金や長時間労働といった就業環境、経済的負担、保育環境、父親の育児参加や母親の休息を支える制度が不徹底であると指摘する。「子どもが成長する姿を、余裕を持って見守れる家族と、それを支える社会を構築する必要がある」と述べ、企業や社会の理解不足も少子化の要因に挙げる。

 さらに、新型コロナが猛威を振るった20年は、結婚式や披露宴が延期・中止になる影響が見られた。

 例年は4200件前後で推移している那覇市の婚姻届受理数は、前年比13%減の3604件にとどまった。那覇市の担当者は「コロナで式が挙げられない中、『婚姻届だけでも』というカップルもいるが、やはり結婚を控えるカップルが出ているのではないか」と語った。

 全国的にも、新型コロナの影響で少子化傾向が加速する可能性が指摘されている。島村教授は「これを機に、仕事と子育ての両立支援や教育費無償化、いつでも誰でも利用できる保育環境の整備に注力するべきだ」と指摘した。

(石井恵理菜)