【識者談話】被災時に際立つ女性の不利益「防災の意思決定の場に女性を」 浅野富美枝・宮城学院女子大元教授


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浅野富美枝さん

 防災に関する意思決定には防災会議だけではなく行政、地域の自治会などが重層的に携わる。行政の防災担当は土木や建築など男性の比率が高い部署に置かれることが多い。さらに危機管理担当はいざというときに徹夜の対応などが求められ、女性を配置しないのが慣例だ。それぞれの組織の意思決定層に女性がいなければ思いは伝わらない。

 女性が1人でもいればいいというわけではない。「黄金の3割」と言われるが、構成員の3割いれば議論の質が変わる。3割の数が必要だ。その女性たちが地域のニーズを把握して公式な場で発言できるよう力を付ける必要もある。

 平日の昼間、男性は仕事に出て地域に残る人は少ない。東日本大震災が起きたのは金曜日の午後2時46分。女性と高齢者と子どもが多い地域に津波が来た。災害時に動けるよう女性たちが訓練しておかなければ実効性はない。これらを教訓に全国で女性の防災リーダー育成が進んでいる。

 女性であるがゆえの差別や不利益は災害時も同様で、同じ被災者でも女性は被害の率が高くなる。これをなくそうと「災害女性学」を立ち上げた。女性の視点を生かすことで障がい者や子どもなど多様な人々のリスクを減らせる。女性が力を付ければ社会が変わる。
 (家族社会学)