「王道」歩まず管理職に 誰もが力を発揮できる組織目指す JICA沖縄所長・倉科和子さん<国際女性デー>


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「誰もが力を発揮できる組織に」と話すJICA沖縄の倉科和子所長=4日、浦添市のJICA沖縄センター

 2月、JICA沖縄で2人目の女性所長に着任した。「王道と言われる部署を経験せず管理職になったのも遅かった。多様なルートがあると示すことを期待されているのかも」と笑う。

 男女の差なく働く意識が強い組織だが、海外への出張や赴任が多い。2000年以前は子どもがいる女性は国内の部署にとどまる傾向が強かったという。

 3人の子どもがいる倉科和子さん(53)も長く国内で働いた。残業はできず、周囲に負担を掛けている負い目があり「できることはとにかくやる」と全力で向き合った。お茶を飲む間もないほどの勢いで定時に仕事を終わらせ、子どもの迎えに走った。

 在職期間が長くなり、他部署への異動希望を伝えた時に上司に言われた言葉が忘れられない。「子どもを産むことを選んだんでしょ。残業もできないし」。衝撃を受けつつ「仕方ないんだな」と受け止めた。

 子どもは育ち、手もかからなくなる。別の上司の後押しもあり、2008年から3年半、3人の子どもを連れて中国の事務所に赴任した。この経験をステップに管理職に昇格した。

 「子どもを選んだ」と言った上司は「変わったね」と喜んだ。「私は変わっていない。時期が変わっただけ。本心を話さなかったから分からなかったのだろう」

 何よりコミュニケーションを大切にしている。思いを伝え合うことで、困った時に支え合う安心感も得られる。「力を発揮するには安心感が必要。制約がある人もみんなが力を発揮できる組織でありたい」と力を込めた。
 (黒田華)