結婚も出産もキャリアも同時進行「頼ることは大切」 沖縄のホテルで総支配人になった女性が伝えたいこと


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ホテルゆがふいんおきなわの福澤奈美総支配人=5日、名護市宮里のホテルゆがふいんおきなわ

 女性の差別撤廃と地位向上を考える一日となった8日の「国際女性デー」。政府はあらゆる分野で「指導的地位に占める女性の割合30%」を目標とするが、沖縄のリーディング産業である観光業はまだまだ女性の管理職が少ない業界の一つだ。そうした中で、ホテルゆがふいんおきなわ(名護市)の総支配人を務める福澤奈美さん(51)は、「後輩たちにも働く女性リーダーの姿を見せていきたい」と意気込んでいる。

 福澤さんは22歳でホテル業界に飛び込み、県内外の宿泊施設で営業やブライダルなど、多くの部署を経験してきたベテランだ。2002年に現在のホテルに入社後、結婚や出産を経験し、15年に総支配人に就いた。

 所属する県経営者協会女性リーダー部会の先輩たちから「結婚も出産もキャリアも何も諦める必要はない。全部が同時進行だよ」と背中を押され、駆け抜けてきた。

 県の調査によると、県内事業所の管理職に占める女性の割合は20・6%。このうち、ホテル業界を含む「宿泊業・飲食サービス業」は15・1%で全産業平均を下回る。女性の従事者が多い業種だが、出産を機に退職する人も多い。

 3人の子を育てる福澤さんは、40歳を過ぎてから2人の出産を経験した。仕事の量や責任が増える中、2年間の育児休暇を取得した。復職後は、子どもを保育園に送って出勤し、夕方には子どもを迎えて実家に預け、また仕事に戻るという生活を繰り返し、余裕を失っていたという。

 ある時、保育園の園長先生がホテルまで訪れ「子どもは私たちに任せなさい。今は女性が働いてキャリアを築いていくんだから、辞める選択はしないでね」と励まされた。夜間保育に預けるなどしながら、仕事と育児を両立してきた。

 職場では子育てをしながら働く若いスタッフは多い。保育園の迎えの時間にどうしても現場を離れられない時には、福澤さんがスタッフの子どもを迎えに行くこともあるなど、互いにサポートし合う雰囲気をつくる。時短休や育休の取得も進んでいる。

 福澤さんは「誰かに頼ることは大切。自分らしくマネジメントしていきたい。総支配人というより、お母さん的な存在を目指している」と笑顔を見せた。
 (中村優希)

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