7年半ぶりの日本開催となった16日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)は、共同文書で中国への警戒感を強調し、日米が一体となって取り組む姿勢を鮮明にした。日米間や多国間の共同訓練を拡大させることで一致した。沖縄の基地負担軽減策が足踏みを続ける中、対中国への対処能力強化を名目に基地負担が増す懸念が高まった。
「まさに、異例の扱いだ」。政府高官の一人は、会談実現に喜びを隠しきれない様子で語った。
今回の会合は1月のバイデン政権発足後初の両長官による外遊となる。
共同文書は海洋進出を強める中国を「既存の国際秩序と合致しない行動」だと批判した。中国海警法への懸念を示し、石垣市の尖閣諸島が米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であることを再確認し、日本側の懸念や要望を米側が「丸のみ」する姿勢が際立った。
一方、名護市辺野古の新基地建設問題は「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを再確認」したとするにとどまった。
前回、東京で開かれた2013年の2プラス2では、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ訓練の県外・国外への移転促進を確認するなど負担軽減策をアピールしていただけに、日米両政府の姿勢の退潮ぶりを印象付けた。
■表裏一体
会談を受け、政府内では今後の日本の負担増を予想する声がささやかれる。
在日米軍を巡って防衛省は、鹿児島県西之表市の馬毛島に、米空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)を移設する自衛隊基地の整備を計画しているが、地元から強い反発が出ている。米軍機による低空飛行訓練も全国で目撃されるようになり、政府は対応に苦慮している。
今回、日本側のメンツを立てた形となる米側は、引き替えとして対中国対処を理由にさらなる負担を求めてくるとみられる。共同文書で台湾海峡情勢の平和と安定に言及したことも、日本が果たすべき役割を広げる布石となり得る。
会見でオースティン米国防長官は「我々の強みは、我々が同盟として行動するからだ」と述べ、日本側の役割拡大に期待した。
岸信夫防衛相は「米軍と自衛隊が任務を達成していくためには、より高度な2国間、多国間の演習を実施する必要がある」と述べ、共同訓練をさらに拡大する考えを強調した。
米側は、沖縄からフィリピンを結ぶ「第一列島線」に地上発射型の中距離ミサイル網を構築する構想を進める。政府高官は、将来的には沖縄にも中距離ミサイルの配備を求められる可能性があると指摘。米側から受けた厚遇の「領収書は高くつく」と冷静に語った。
■県のバランス
日米対中国の緊張感が高まれば、沖縄での訓練が増加し負担が増す恐れがある上、有事に巻き込まれる危険性も高まる。一方で海警法をはじめとする中国政府の行動には批判も強く、県としてはバランスを取った対応が求められる。
県幹部は「海警法について気になっている。多国間(の枠組み)で対応していくという話で、全体を見る必要がある」と述べた。基地負担が増す恐れについて、県が設置した「米軍基地問題に関する万国津梁(しんりょう)会議」の提言書に言及し「県は提言書に基づき(米軍の戦略について)『集中から分散へ』と指摘している。早めに日米両政府に伝えたい」と語った。
(知念征尚、明真南斗)