ターニングポイントは夏の敗戦 「具商リズム」覚醒の瞬間<具商・初センバツ 全員力で挑む>上


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県秋季大会 準決勝 具志川商―興南 初の決勝進出で喜ぶ具志川商ナインら=2020年10月10日、沖縄市のコザしんきんスタジアム(大城直也撮影)

 第93回選抜高校野球大会(19日から13日間、甲子園球場)に具志川商が初出場する。抜群の“組織力”で果たした秋の九州8強入りが評価され、21世紀枠で初切符を手繰り寄せた。県大会は16強までは進むが、そこからの壁は厚く甲子園出場は遠い夢だった。敗戦を糧に急成長を遂げた具商ナイン。19日の開幕を前に強さを探る。

 選抜に出場するメンバーは、甲子園を狙えるチームをと喜舎場正太監督が集めたえりすぐりの選手たちだ。新戦力の台頭はチームに刺激をもたらし、19年の新人中央大会で1点差の接戦を勝ち上がり、決勝に進んだ。だが、古豪・沖縄水産との決勝は序盤から苦戦を強いられた。本格左腕を擁する沖水に3―9で敗北。ただ、これまで決勝進出がなかったチームにとって準優勝という結果は「俺たち強いかもしれないと、(いい意味での)うぬぼれが生まれた」(喜舎場監督)。

 第2シードで挑んだ19年の秋季大会は3回戦、20年の春季大会は2回戦敗退と8強入りの壁は厚くのしかかった。立て直しを図り挑んだ昨夏の独自大会は、3回戦で普天間に逆転負け。

 喜舎場監督はこの敗戦について「選手にとって大きなターニングポイントだった」と挙げる。コロナ禍で大会や練習時間が制限される中、3年生と挑んだ最後の大会。3回戦に先発登板したのは現チーム主将の粟國陸斗だった。七回まで零封と力投したが、八回に制球が乱れて降板。「3年生と一緒に過ごせる夏を終わらせてしまった責任を感じていたのかもしれない。あの負けから、2年生が今のままじゃだめだと覚悟を決めた」(喜舎場監督)。ナインが覚醒した瞬間だった。

 新チーム始動と同時に、徹底して貫いたのは組織力だ。「個々の役割をしっかり把握しろ」。守備では各ポジションが基本に立ち返り、堅守を徹底。打撃に波がある分、走塁や盗塁技術を磨き“具商リズム”をつくり出す。

 敗戦の反省を基にしたチーム全体の鍛錬は秋季大会ですぐさま発揮される。甲子園へとつながる九州8強入りの貴重な戦績となった。

 夏の敗戦から奮起した具商ナイン。01年に同じく21世紀枠出場で4強入りした宜野座が巻き起こしたあの興奮を、自分たちが巻き起こすと誓い、甲子園へと乗り込む。
 (上江洲真梨子)