日米2プラス2 軍事的緊張の緩和探れ<佐藤優のウチナー評論>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
佐藤優氏

 16日、東京都内で日米両国政府の外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が行われた。

 〈「まさに、異例の扱いだ」。政府高官の一人は、会談実現に喜びを隠しきれない様子で語った。/今回の会合は1月のバイデン政権発足後初の両長官による外遊となる。/共同文書は海洋進出を強める中国を「既存の国際秩序と合致しない行動」だと批判した。中国海警法への懸念を示し、石垣市の尖閣諸島が米国による防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であることを再確認し、日本側の懸念や要望を米側が「丸のみ」する姿勢が際立った。/一方、名護市辺野古の新基地建設問題は「普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを再確認」したとするにとどまった〉(17日、本紙電子版)。

 辺野古新基地建設について、日米両国政府は、「可能な限り早期に建設を完了する」ことを確認したが、ここからは期限をつけていかなる対価を支払っても新基地建設に固執するという姿勢がうかがわれない。日米両国政府にとって辺野古新基地建設の政治的比重はかつてよりも低くなっている。

 今回の2プラス2で日米両国政府が名指しで中国を非難したことの方が、沖縄に与える影響について研究する必要があると思う。当然、中国はこの発言に反発し、日本に対する警戒感を強める。ここから不信の連鎖が始まり「国防の島」としての沖縄の機能を強化せよという意見が中央政府から出てくる可能性がある。

 前掲本紙は〈日米対中国の緊張感が高まれば、沖縄での訓練が増加し負担が増す恐れがある上、有事に巻き込まれる危険性も高まる。一方で海警法をはじめとする中国政府の行動には批判も強く、県としてはバランスを取った対応が求められる。/県幹部は「海警法について気になっている。多国間(の枠組み)で対応していくという話で、全体を見る必要がある」と述べた。基地負担が増す恐れについて、県が設置した「米軍基地問題に関する万国津梁会議」の提言書に言及し「県は提言書に基づき(米軍の戦略について)『集中から分散へ』と指摘している。早めに日米両政府に伝えたい」と語った〉との見方を示す。

 県幹部の「海警法について気になっている。多国間(の枠組み)で対応していくという話で、全体を見る必要がある」という認識は正しい。ただし、万国津梁会議の提言書が現実にかみ合っているとは思えない。

 県として重要なのは、中央政府の沖縄政策について、現時点での正確な情報を得ることだ。中央政府で鍵になる人物は又吉進・外務省参与(元県知事公室長)だ。副知事が外務省沖縄事務所を通じて又吉氏との面会を公式に求めるべきと思う。

 県と又吉氏とでは、辺野古新基地建設問題に関しては見解を異にするが、沖縄を巡る中央政府と米国の動静に関する情報共有ならばできるはずだ。正確な情報に基づいて、沖縄を巡る軍事的緊張が緩和される方策を県として追求した方がいいと思う。

(作家・元外務省主任分析官)