那覇市の琉球新報ホールで19日開かれた第37回・第38回東恩納寛惇賞の贈呈式は、新型コロナウイルスの感染防止のために規模を縮小し、祝賀会も中止となった。例年よりも限られた招待者と選考委員ら約20人が、受賞者の上原兼善さん(77)と比屋根照夫さん(81)を祝福した。上原さんと比屋根さんは熱っぽいスピーチを披露し、衰えを知らない研究意欲を見せた。
昨年の第37回贈呈式は開催直前に新型コロナの県内感染が確認され、延期に。第38回と合同開催となった。
上原さんのスピーチは学生時代の比屋根さんとの交流談に始まり、交易の視点から見た琉球国家の形成論へ。島津氏による植民地的支配の一方、しなやかに自らの利益を確保する琉球国の姿を紹介し、「歴史の見方が変わってくる」と力説した。
沖縄の日本復帰前に研究生活をスタートした比屋根さんは「沖縄の不条理な現実を何とかしないと。そういう使命がバックボーンとしてあった」と吐露した。伊波普猷ら近代沖縄知識人の歩みを紹介しながら「沖縄はアジアとの共通性があり、非常に奥深い。いずれ論文をお目に掛ける」と、さらりと誓った。
出席者は上原さんと比屋根さんに「おめでとう」と言葉を掛け、グータッチや記念撮影で祝福した。会場は温かな空気に包まれた。