「Z世代」へ企業はシフトを 立場が逆転「若者は希少に」 原田曜平・信州大特任教授に聞く<焦点インタビュー>


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 SNSに慣れ親しみ、新たな流行の発信を生み出す年代層として、10代~20代中盤の「Z世代」に注目が集まっている。20年以上、若者研究に携わっている信州大特任教授の原田曜平氏に聞いた。

Q.Z世代の定義は。

 「中学生くらいからおおよそ25~26歳以下の、いわゆる『ゆとり世代』の下の世代を指す。米国ではジェネレーションZと呼ばれ、7~8年前から注目されていた。これまで日本は、規模的に多い高齢者をターゲットとする企業が多かった。しかしコロナ禍で高齢者が外出を控えたことや、オンラインのデジタル消費と相性が良いことから若者に注目が集まっている」

 「特徴としてはデジタル世代で、最初からスマートフォンを持っているということがある。ガラケーから持ち始めたゆとり世代と比べ、特に発信型の複数のSNSに慣れ親しんでいる。周囲に『いいね』とされることに慣れ、プチ承認欲求を満たされて育っていることから、自意識が強いことが多い。また、就職氷河期など暗い時期が長かった上の世代に比べ、景気が比較的良く、人手不足で若者の市場価値が高い時期に育っている。そのため、ガツガツした上昇志向をあまり持たず、のんびりとした部分が強い」

Q.企業の採用に変化は。

 「例えば、近年では逆求人サイトが急激に普及している。企業が情報を提示して学生が集まるこれまでの就職活動ではなく、学生がプロフィルを出してそれを見た企業がオファーする。昔の日本企業で主流だった、ピュアな若者を採用して社風に染め上げていくという発想とは全く逆だ。若者が希少な存在になって、立場が逆転してきていることに企業は気が付く必要がある。実は、コロナ禍による倒産よりも、人手不足による倒産の方が多いというデータがある」

Q.コロナ禍で若者の消費に変化は生じているか。

 「他の世代と同様ではあるが、テレワークなどで自宅もオンの場所になったことから、より強いリラックスを求める傾向がある。例えば香水やアロマなどの香りや、間接照明などはすごく伸びている」

Q.世代の中の地域差は。

 「SNS利用率などを調査しているが、スマホの普及で、良くも悪くも地域差はなくなってきている。流行はやはり東京で生まれやすいが、同時に地方までSNSで発信される。少なくとも情報を知るタッチポイントでは地域差がなくなっている。国内と海外の若者の差もなくなることで、企業側から見れば、日本のZ世代に受け入れられる商品やサービスは世界でも通じる可能性が高くなる」

Q.Z世代に焦点を当てる意義は。

 「日本は中高年の人口が多く、単価も高いので中高年向けマーケティングの費用対効果が高かった。しかし、世界全体ではZ世代が人口の4分の1程度を占める。未来市場として、企業が生き残るためには若者市場は絶対に取らなくてはいけない。企業がいかに長期的な視座を持てるかが問われている」

 (聞き手 沖田有吾)