パートナーシップで目標を達成しよう【SDGsって? 知ろう話そう世界の未来】17


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本連載はSDGs(持続可能な開発目標)の17目標を一つずつ紹介してきた。分野は幅広く、目標1「貧困」を解決しなければ目標2「飢餓」もなくならないように、それぞれが複雑に絡み合う。これらを解決するには、行政、企業、研究・教育機関や市民といろいろな立場の人たちが、ときには国境を越えて協力することが必要だ。

目標17は「パートナーシップで目標を達成しよう」。沖縄にルーツを持ち世界で活躍するウチナーンチュネットワークのうち、特に活発に活動するハワイ沖縄連合会、県内で企業・団体が連携してSDGsを推進する「OKINAWA SDGs プロジェクト」を紹介する。

「故郷」思う心で支え合い

ハワイ沖縄連合会

 沖縄から海外への移民は多く、世界中に県系人ネットワークが存在する。小さな島しょ県で、複雑な歴史背景を持ち、各地で政治的マイノリティーである歴史的な経緯もあって、県系人は結束力を強め、海外から「故郷」を支える取り組みも続けてきた。米ハワイ州は沖縄県と姉妹都市提携を結び、市民や行政など各分野で交流に積極的だ。デービッド・イゲ州知事は県系3世でもある。

 通訳兵などとして沖縄戦に従軍したハワイの県系人たちは焦土と化した故郷を目の当たりにし、戦後すぐに沖縄救済運動を展開した。約5万ドルの寄付を集め、購入した豚550頭を沖縄に送った。やがて寄贈された豚は10万頭に増え、沖縄の養豚業を復興させて食糧難の解消に大きな役目を果たした。ハワイでは2018年に友好を記念する「海を渡った豚の日」が制定された。

 19年10月の首里城火災では、県系人組織「ハワイ沖縄連合会」が中心となって再建資金を造成し、県に約10万ドルを寄付。その前年に完成したハワイ沖縄連合会の新たな拠点「ハワイ沖縄プラザ」の建設の際には、県内から1億円超の寄付が集まって建設費用に充てるなど、海を越えてウチナーンチュの支え合いが続く。

首里城再建資金として10万ドルを県に寄付したハワイ沖縄連合会のリン宮平会長(右から4人目)ら=2020年10月30日、県庁

 人口や産業構造が類似する沖縄とハワイは、互いの基幹産業である観光業に関する情報交換などを続けてきた。10年に「沖縄・ハワイクリーンエネルギー協力に関する覚書」も締結し、両地域の行政やエネルギー業界、学術機関が共同研究などに取り組んでいる。

 約60年にわたりハワイとの交流事業に携わるハワイ沖縄協会の高山朝光前会長は「ハワイのウチナーンチュは物心両面で豊かな沖縄、誇れる沖縄であってほしいと願っている。沖縄にとってハワイは最も身近な海外で、戦前、戦後に沖縄を支えたことへの感謝がある。若い世代がこの関係を受け継ぎながら連携していくことが重要だ」と話した。


異業種連携し未来創造

OKINAWA SDGs プロジェクト

 SDGsの設定の前後で、企業の社会課題に対する姿勢は大きく変化した。2017年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、SDGsに取り組むことが新たなビジネスの機会を生むとして、「12兆ドルの経済価値、最大3億8千万人の雇用をつくる可能性がある」と発表された。環境や人権に配慮した企業に資金が集まる投資の流れもある。これまで多くの企業にとって「ボランティア」だった社会課題への関わりが、本業での生き残りを懸けて取り組むテーマに変化しつつある。

 県内でも多くの企業がSDGsに関心を寄せる一方、「何をしていいか分からない」「1社ではできることも限られる」との声もある。これらに応えようと2020年、「OKINAWA SDGs プロジェクト」(OSP、事務局・琉球新報社、うむさんラボ)が始まった。

 それまで関わりのなかった企業・団体が出合い、新しい事業を生み出すための接点となる場所、プラットフォームとなり、1月現在で23社が参加している。2020年度は5回の会合を開き、参加各社が互いの取り組みを紹介したほか、行政やNPOから沖縄の社会課題を学び、社会起業家から先進事例も聞いた。毎回「時間が足りない」との感想が出るほど、参加者らは思いがあふれる意見を交わし、盛り上がる。

OKINAWA SDGs プロジェクトのカンファレンス(会合)で活発に意見を交わす会員ら=2020年10月16日、那覇市の琉球新報ホール

 同プロジェクトをきっかけに、子ども食堂を支える寄付の仕組み、SDGsに関する連携協定、持続可能な赤土対策を支援する催しと、新事業も誕生した。21年度は活動をさらに充実させ、大学や高校と連携して若い世代も関わりを持ち、よりよい沖縄、世界の未来へ歩みを進める。

 3月13日にはこれまでの活動を報告する公開フォーラムを琉球新報ホールで開く。問い合わせはOSP事務局(琉球新報社)(電話)098(865)5213、平日9時半~午後5時半。


ネット利用に所得格差

 人々のパートナーシップを支えるため、インターネットなどICT(情報通信技術)は不可欠なインフラだ。総務省の2020年版情報通信白書によると、県内のネット利用率は90.1%。全国で90%を超えるのは東京、大阪をはじめ12都府県で、沖縄は比較的利用率が高い。

 この利用率は全国的に世帯年収に比例する。年収400万円以上は90%を超えるが、200万円未満は80.7%にとどまる。利用者のうちパソコンを使う人は沖縄は43.9%で、東京の65.1%を筆頭に都市部が高い傾向となっている。県内でも所得や地域による格差があるとみられ、この解消への丁寧な対応が必要だ。

SDGsとは…
さまざまな課題、みんなの力で解決すること

 気候変動、貧困に不平等。「このままでは地球が危ない」という危機感から、世界が直面しているさまざまな課題を、世界中のみんなの力で解決していこうと2015年、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が決められた。世界中が2030年の目標達成へ取り組んでいく。

 「持続可能な開発」とは、資源を使い尽くしたり環境を破壊したりせず、今の生活をよりよい状態にしていくこと。他者を思いやり、環境を大切にする取り組みだ。たくさんある課題を「貧困」「教育」「安全な水」など17に整理し、それぞれ目標を立てている。

 大切なテーマは「誰一人取り残さない」。誰かを無視したり犠牲にしたりすることなく、どの国・地域の人も、子どももお年寄りも、どんな性の人も、全ての人が大切にされるよう世界を変革しようとしている。

 やるのは新しいことだけではない。例えば物を大切に長く使うこと。話し合って地域のことを決めること。これまでも大切にしてきたことがたくさんある。視線を未来に向け、日常を見直すことがSDGs達成への第一歩になる。