純粋な恋物語を好演 田口、佐辺で「手水の縁」 国立劇場おきなわ


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「手水の縁」で親の許しを得ない恋に落ちる山戸(右・田口博章)と玉津(佐辺良和)=13日、浦添市の国立劇場おきなわ

 波平大主の一人子である山戸(田口)は花見の帰り道、川で髪を洗う娘玉津(佐辺)に一目ぼれをする。山戸は、玉津に手で水をすくって飲ませてくれるよう頼む。玉津は断るも次第に山戸の恋心を受け入れ、2人は再会の約束をして別れる。情感の込められた唱えの後、恋の喜びを抑えるような落ち着いた「仲順節」の演奏が続き、対照的な表現が秘めた恋の美しさを感じさせた。

 山戸が玉津の家に忍び密会する「忍びの場」では、「金武節」や「干瀬節」、「仲風節」などで山戸の恋心を表した。門番(池間隼人)に密会が見つかり、玉津の父は志喜屋の大主(石川直也)ら部下に玉津を殺すよう命じる。

 死を目前にした玉津が山戸への思いを切々と語る場面や、家臣「山口の西掟」(宇座仁一)が玉津の処刑にちゅうちょし思い悩む場面など、見せ場が多くあった。

処刑されそうになった玉津(左から2人目、佐辺良和)を助ける山戸(左端、田口博章)

 西掟が刀を構え切りつけようとするが、山戸が瞬時に玉津を助け、懇願する場面も緊張感があった。助かった玉津と山戸が感謝の気持ちを述べ、正面に目をやり、和らいだ表情を浮かべた場面も印象的だった。

 地謡は歌三線に仲村逸夫、棚原健太、玉城和樹、仲嶺良盛。箏に池間北斗、笛に入嵩西諭、胡弓に前田博美、太鼓に久志大樹。一部は、春をテーマにした琉球舞踊4題が上演された。「柳」に城間千恵美、「揚作田」に阿嘉修、「花風」に宮城裕子、「川平節」に新垣江里子、新垣麻里子が出演した。

 本公演から国立劇場おきなわの字幕表示機が17年ぶりにリニューアルされた。LEDが使用され、文字がより鮮明に見やすくなった。
 (田中芳)