沖縄経済の変遷ひもとく一冊を発刊 1950倶楽部会長・上間優氏に聞く


社会
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1950倶楽部の書籍発刊の意義について語る同会会長の上間優大同火災海上保険会長=22日、那覇市

 1950年創業の県内企業11社でつくる1950倶楽部が、琉球王国時代から現代までの沖縄経済の歩みや県内各業界の変遷をまとめた書籍「沖縄経済と業界発展―歴史と展望―」を出版した。2015年に発足し、社会貢献活動に取り組んできた同会の活動は、創業70年の節目を迎えた昨年で一区切りとなり、書籍の発刊は活動の集大成となる。1950倶楽部の会長を務めてきた上間優・大同火災海上保険会長に、書籍発刊の意義や今後の県経済の展望を聞いた。 (聞き手 池田哲平)

 Q:本を発刊した経緯を。

 「沖縄の企業や経済史について、先行研究をしていた大学教授らの論文を読んだことをきっかけに、業界の歴史をまとめたら面白いものができるとの思いで、構想を練ってきた。琉球大国際地域創造学部の與那原建教授、同大の大城肇名誉教授らのつながりもあり、発刊することができた」

 「沖縄の経済発展を一つにまとめられたことは良かったと思っている。端書きで大城肇氏が的確に触れているが、経済学、経営学の両方の視点から俯瞰(ふかん)し、マクロとミクロの沖縄経済と業界の中身を知ることができる一冊となった。コラムで琉球新報、沖縄タイムスの協力をもらい、より充実した内容になっている」

 Q:1950倶楽部の活動を振り返って。

 「会員企業は、同じ年に創業し、いわば同級生だ。5年前に、創業65周年を迎えたことを契機に、琉球物流の大嶺秀宣会長(当時)から『共同で県経済や県民生活に寄与しよう』と発案があった。光文堂コミュニケーションズ前社長の故・外間政春氏の尽力もあって当初は7社で集い、スタートした。同じ年の創業だが深いつながりはなかったため、取り組みを通してまとまったことに意義があったと思う。集大成として本をまとめたが、就活生や大学生に手にとってもらい、売り上げの全額を永続的に寄付していきたい」

 Q:倶楽部の活動の中で、沖縄の貧困問題など社会課題解決に向け、寄付活動などに取り組んできた。

 「沖縄はアジアに近い地理的優位性もあり、ポテンシャルは高いものがある。一方で、県民所得が全国最下位で、貧困の問題など課題が表面化してきた。地場の企業として問題解決に取り組むことで、少しでも改善につながってほしいとの思いがあった」

 Q:上間会長は著書で「創業は易く、守成は難し」との故事に触れていた。沖縄の企業、経済に今後どのような形で発展を望むか。

 「昨年から続く感染症の影響は、全世界中で同時に広がり、これまでになかった出来事だと思っている。しかし、県内企業、県民はこれまでも多くの経験を経て、何度もパラダイム・チェンジ(変容)をしてきている。行政の支援などをうまく活用しながら、感染症の危機をどうにか県内企業が乗り越えていただきたい。厳しい中で、これまで気付かない点、新たな発見もあったと思う。沖縄経済の歴史をひもときながら、考える機会にしてほしい」


1950倶楽部の会員企業は次の通り。

▽赤マルソウ
▽新垣具郎商店
▽新垣産業
▽沖縄食糧
▽沖縄バス
▽光文堂コミュニケーションズ
▽屋部土建
▽りゅうせき
▽琉球海運
▽琉球物流
▽大同火災海上保険