【深掘り】「泡消火剤にPFOS」空自再調査、過小評価の懸念 調査遅れ検出難しく


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航空自衛隊那覇基地から流出した泡消火剤==2月26日、那覇市高良

 航空自衛隊那覇基地から泡消火剤が流出・飛散した問題で、自衛隊や那覇市、県はそれぞれ泡消火剤を含む水や周辺の海水などを調査している。だが、泡から有機フッ素化合物の一種PFOS(ピーフォス)などが検出されたという琉球新報の報道を受けて、事故から約2週間後に調査したため、泡自体の分析はできていない。識者は「当時の(泡自体の)試料がなければ過小評価になる」「調査の限界を踏まえて結果を解釈すべきだ」と指摘する。

 自衛隊は、消火剤が流れ込んだ基地内水路から回収した水にPFOSが含まれているかどうかを調べる。那覇市は空自が回収した消火剤を含む水の一部を採取し、基地内の水路でも水を採取した。空自と市はそれぞれ、泡が飛散した保育園の土壌も調査している。県は瀬長島周辺の海域3カ所で海水を採取した。

 那覇市が分析するのは、国内で暫定指針値が定められているPFOS、PFOA(ピーフォア)のみ。PFOSの代替物で、国際的に規制対象に加える動きがあるPFHxSの含有は調査していない。

 一方、琉球新報が採取した泡を分析した、京都大の原田浩二准教授は「既に(PFOSなどが)拡散し切っている場合がある」と検出の難しさを指摘する。「現時点で影響が見られなくなったのなら、現状の評価としては良い」とした上で「問題は流出した泡消火剤にPFOSが検出可能なレベルで含まれていたかどうかだ。環境への影響は、事故直後にどれだけあったのか(が分かる)、当時の試料がなければ過小評価になる」と強調する。

 消火剤を含む水についても「希釈の度合いが重要だ。(水に対して)わずかであった場合、元の消火剤にPFOSがどれだけあったかは評価できない」と指摘する。また「泡の飛散場所の情報を市民から得て、分析してより多くの証拠を得るべきだ」と提案する。

 調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクトの河村雅美代表は「(時間が経った上で実施された)今回の調査の限界を踏まえて結果を分析、解釈すべきだ。安易な安全宣言で終わらせるべきではない」と話した。
 (明真南斗、長嶺晃太朗、伊佐尚記)