「県主体」の維持 焦点に 政府の振計総点検 一括交付金は評価回避


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 今回、内閣府が総点検を実施した沖縄振興計画は、1972年の日本復帰から10年ごとに更新を繰り返してきた第1~5次にわたる振計の中で、初めて県が主導して策定したものだった。

 県が2010年に策定した長期構想「沖縄21世紀ビジョン」をたたき台とし、県が使い道を決められる、自由度の高い「一括交付金」制度も創設された。

 ただ、一括交付金制度は減少傾向が続き、一方で19年度に国直轄の「沖縄振興特定事業推進費」が新たに創設され年度ごとに増額を繰り返してきた。

 次期振計のイニシアチブを取るのは県か国か。「一括交付金」の扱いはその行方を占う上で、指標の一つであるだけに、注目されたが、内閣府は制度そのものの評価は避けた格好だ。

 今回の総点検の指揮を執ったのは、大臣就任直後から「データとエビデンス」を重視する姿勢を強調してきた河野太郎沖縄担当相だった。シビアな評価も予想されたが、「8割有効」とされた結果に県関係者は胸をなで下ろしているはずだ。

 ただ、今回の総点検は県が抱える根深い問題も浮き彫りにした。

 1人当たり県民所得が全国最下位で、製造業の割合が4%台にとどまる点などは、長年指摘されている課題で、近年急成長してきた情報通信分野でも、コールセンターなど「労働集約的な生産性の上がらない分野が多い」(内閣府幹部)とされる。高校・大学の進学率、待機児童率、困窮世帯の割合などでは全国平均と大きく見劣りする数字が並ぶ。県経済に大きな打撃を与えている新型コロナウイルスの感染拡大の影響も反映されておらず、既存の問題がさらに拡大する懸念もある。「県主体」での振計という体制が維持されるかはなお不透明な状況だ。 (安里洋輔)