石垣市の自治基本条例 審議会が「問題点多岐にわたる」と指摘 廃止要求は見送り


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新里裕樹市自治基本条例審議会長(右)から答申を受け取る中山義隆市長=18日、石垣市役所

 石垣市自治基本条例審議会(会長・新里裕樹八重山青年会議所前理事長)は18日、現条例案の問題点を指摘する答申を中山義隆市長に提出した。市は今後、今回の答申を次回見直し時の検討材料にするか、答申を踏まえた改正案を作成するかを検討する。

 答申では「わが国の法体系や市民憲章と整合する新たな形の条例として再構築すべき」とする一方、「他の条例体系に影響があることを念頭に慎重に検討すべきだ」とした。その上で問題があるとする条文を列挙した。

 中山市長は「答申を基にしっかり検討を重ねて成案にしたい。街づくりのさまざまな点で活用したい」とした。新里会長は「答申や市民意見に向き合って改訂を進めると、より良い条例になると思う」と述べた。

 審議会では当初、改正案を答申する予定だったが、問題点や意見が多岐にわたるとして、問題提起型とすることに方針を変更した。

 2009年に県内で初めて制定され、10年4月に施行された石垣市自治基本条例を巡っては、19年の市議会12月定例会で一部与党が廃止条例案を提出し、議会内外で議論を巻き起こした末に否決された。

 審議会は20年9月に始まったが、住民投票訴訟の市側代理人が委員に委嘱されるなど、委員構成を疑問視する声もあった。

「市民」の対象広く問題視

 石垣市自治基本条例審議会の答申は、全体的に現条例に批判的な記述が大半を占めた一方で、一部委員が強硬に主張した廃止や効力の一時停止を求める表現は見送られた。住民意見では現条例に肯定的な意見も多かったが、答申本記には盛り込まれなかった。

 審議会でも言及が多かった条例上の「市民」の定義について、その対象幅が広いとして「地方自治法と明らかに齟齬(そご)を来している」と問題視。具体的な法的問題点は指摘していない。

 陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を巡り、市と市民団体との訴訟で解釈が争われる住民投票規定については「抜本的な検討が必要だ」とした。性的マイノリティーの社会参画保障について記述追加を検討するよう求めた。

自治基本条例>
 行政と住民の役割分担や、まちづくりの原則などを定めた条例で「自治体の憲法」とも呼ばれる。住民や地域の自治組織が自治体の事業立案に参加する権利や住民投票制度などについて定めるのが一般的。2000年12月に北海道ニセコ町が制定した「まちづくり基本条例」が全国初とされる