ひめゆり資料館リニューアル 中心になったのは戦後生まれの学芸員「学徒たち身近に」


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リニューアルの展示デザインを見ながら話をする、ひめゆり平和祈念資料館の普天間朝佳館長(左)と学芸員の前泊克美さん=23日、糸満市のひめゆり平和祈念資料館

 糸満市のひめゆり平和祈念資料館が4月12日にリニューアルオープンする。リニューアルのテーマは「戦争からさらに遠くなった世代へ」。開館当時や、2004年に実施した最初のリニューアル時よりも、身近な家族に戦争体験者が少なくなった今の世代を意識した。新たな展示では絵やイラスト、生き生きとした表情の写真を多用する。普天間朝佳館長(61)は「戦争を知らない今の世代に伝わるように工夫した。県外の人だけでなく、県民にも、ぜひ生まれ変わった資料館に来ていただきたい」と話す。

 ひめゆり平和祈念資料館は、沖縄戦に動員された沖縄師範学校女子部と県立第一高等女学校の同窓生らが、犠牲者のことや戦争体験を語り継ぐため建設を決め、1989年6月23日に開館した。展示内容は元学徒らが中心になって考えた。戦時中にいた壕に入って遺品を拾い集めたり、お互いの戦争体験を聞き取ったりして作りあげた。最初のリニューアルが行われた04年も元学徒らが内容を考案した。

 一方、今回は、初めて戦後生まれの30~40代の学芸員が中心となって構想。細かい内容や表現は元学徒らに電話や手紙で確認し、正確性を心掛けたという。展示写真は、収集した中から選び直した。これまでは固い表情が多かったが、リニューアルでは生き生きとした表情の写真を増やした。学芸員の前泊克美さん(43)は「当時も今と変わらない学生生活があった。歴史上の軍国少女ではなく、彼女たちを身近に感じることにより、戦争体験もより身近に感じてもらえるのではないか、と考えた」と説明する。

 糸満市の中高生からも展示について意見を聞いた。「文字が多すぎる」「一目見て分かるようにしてほしい」といった声を受け、絵やイラストを多く取り入れた。一列になって月夜の中を戦場に向かう風景や、手術場壕で日本軍の負傷兵の手術を手伝った様子をイラストで再現し、証言を正確に反映させた。

 さらに「ひめゆりの戦後」の展示室を新たに設ける。戦後もつらい思いを抱え続けた元学徒らが自身の体験や教訓を継承し、次の世代に平和の尊さを伝えるため、資料館設置に至った経緯を紹介する。元学徒一人一人から今の世代に伝えたいメッセージも流す。普天間館長は「戦後に生まれた私たちにとって、元学徒たちがなぜ体験を伝えようと思ったのか、その思いや歩みを知ることはすごく大事なことだと思う」と語る。

 資料館は入館料や寄付だけで運営しているが、新型コロナの影響で入館者が前年比で9割も減少しているという。普天間館長は「大きな打撃だ」としながらも「リニューアルはその中の希望だ。厳しい状況は続くだろうが、ひめゆりの体験者たちが建設し運営してきた資料館と活動を次の世代へ引き継いでいくため、一歩一歩進んでいく」と前を向く。(中村万里子)