コロナ「濃厚接触者」となった私を救ったのは 佐野真慈(宮古支局)


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written by 佐野真慈(宮古支局)

 「咳をしても一人」。自由律俳句の俳人、尾崎放哉の代表句の一つだ。言いようのない孤独がひしひしと伝わる。昨年10月、まさに「咳ひと」状態に陥った。宮古や八重山を視察した自民県議団の新型コロナクラスターに巻き込まれた。保健所から「濃厚接触者」と通達を受け、2週間の自宅待機となった。事務所兼住居の支局に缶詰めだった。1日、パソコンの前に座り、記事を書いたり電話取材したり…愚痴をこぼしても一人。

コロナ禍で生活必需品となったマスクと消毒液

 コロナ感染拡大が続く中、自殺者が増えている。2020年の全国の自殺者数は2万1081人(警察庁統計)。増加に転じたのは09年以来という。背景には雇用の不安定さや自粛生活による孤立、不安などが指摘されている。

 「咳ひと」経験者の私には、追い詰められる心情が少し分かる。自宅待機中、取材がない日は声を発することすらなく一日が終わる。外にも出られず、うつうつとした気分を発散するすべもない。

 私を救ったのは友人や知人からの「大丈夫?」の電話だ。魔法のように心を軽くしてくれた。「一人じゃないってすてきなことね」と鼻歌まで出た。

 もし、あなたの周りに追い詰められている人がいたら「大丈夫?」と一声掛けてみてほしい。それだけで救われる人はきっと多い。

(宮古島市、多良間村担当)


ゆんたくあっちゃー 県内各地を駆け回る地方記者。取材を通して日々感じることや裏話などを紹介する。