「やっと客戻ってきたのに」時短要請再び 先行き見えない飲食業、卸業者も困窮訴え


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時短要請による経営の厳しさを語るバー才谷屋を経営する上原彰太さん=29日、那覇市久米のバー才谷屋

 玉城デニー知事は29日、4月1日から本島20市町村の飲食店などに時短営業を要請することを発表した。新型コロナウイルスの感染者が急増する現状に「致し方ない」と対策に理解を示す事業者の声がある一方で、2月末までの時短要請を終えたばかりの飲食業界や、卸・納入業者など幅広い業種に再び影響が広がる。緊急事態宣言を乗り切り、客足回復に向けた機運が見え始めていた県経済界だが、新年度の開始早々に自粛を強いられる形となる。

 那覇市久米でBAR才谷屋を経営する上原彰太さんは「やっと常連さんが戻ってきたのに。また休業しないといけない」と肩を落とす。年末年始に時短要請が出てから約2カ月店を休業し、3月にやっと営業再開したところだった。

 店は通常午後8時にオープンする。午後8時での酒類提供終了、午後9時までの時短営業に応じればほぼ営業できないため、休業せざるを得ない。周辺の同業者では、店を畳んで異業種に転職する人も出てきているなど、経営は厳しさを増している。

 上原さんは「早い時間からの営業も考えたことはあるが、居酒屋と違って夕方からバーに行く人はいない。今回は要請に応じない店も出てくるのではないか」と話した。

 飲食店への卸・納入事業者など、時短の影響は関連事業者にも波及する。泡盛やビールなどを卸す南島酒販(西原町)は、2月末までの時短要請によって、飲食店向けの業務用が落ち込んだ。同社の担当者は「酒屋の稼ぎ時のクリスマスを含め、昨年12月末から今年2月末まで、業務用は例年の約4割しかなかった」と振り返る。

 3月に入り、人の動きが戻ったことで売り上げも回復傾向にあったが、再度時短営業の要請が出されたことで先行きは暗い。「企業や役所の飲み会も中止になり影響は出るだろう。また2月までのような落ち込みを懸念しているが、この状況では致し方ない」と力なく話した。

 本島中部で豚肉を生産、販売する事業者は「飲食店終了時間が早まると、注文はがくっと減る。生き物を扱っているので、抱えられる在庫にも限りがある。利益を度外視して回していくしかない」と懸念する。

 県は時短要請に応じた飲食店に、1日4万円の協力金を支給する。しかし、食材納入業者など飲食店以外に直接の支援はなく、「我々も納税者なので、なんとかしてほしい。給食などで、地産地消で率先して消費するなどの取り組みをお願いしたい」と話した。

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