【記者解説】首里城火災、責任所在を示せず 再発防止の実効性に疑問も


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 沖縄県の第三者委員会「首里城火災に係る再発防止検討委員会」の最終報告書からは、関係機関は火災に対する意識や備えが弱く、「平成の復元」から約20年間、機器や防災危機管理体制を更新せずにきたつけが首里城火災という最悪の結果を生んだことが読み取れる。未曽有の火災から約1年半を経て、火災の原因を探る作業はこれで全て終了した。出火原因が特定されなかったこともあり、焼失した建物群があった国営区域を整備した国、管理を担った県、県から指定管理を受けた沖縄美ら島財団、これら3者とも明確な責任が問われることはなかった。

 3者とも「責任を重く受け止める」とするが、実際に対応したのは財団が減給をしたのみだった。責任所在が曖昧なまま、再建は進む。県民からは再発防止策の実効性に疑問が上がりかねない。

 再発防止委は、今回再建する首里城が何百年先も残り続けるためには、県民一人一人が「首里城は燃えやすい」との認識に立ち、後世にわたって防災意識を保ち続けないといけないと指摘する。

 その意味でも県民の理解なしには、たとえ建物が完成しても真の再建とは言えない。火災拡大を防げなかった要因は何か。県は首里城火災の教訓を何世代にもわたって伝え続ける責任がある。

 (梅田正覚)