太鼓と舞、圧倒の舞台 玉城流七扇文の会会主 知名文子60周年公演


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弟子らと自身の創作太鼓を演奏する知名文子(前列左から4人目)=21日、浦添市の国立劇場おきなわ

 琉球舞踊の玉城流七扇文の会会主で、乾流太鼓段の会師範の知名文子芸歴60周年記念公演「第6回知名文子琉舞・太鼓研究所発表会 舞つづみ すりーずりー」が21日、浦添市の国立劇場おきなわであった。舞うようにたたく同流の太鼓と、舞踊の魅力が詰まった15演目を披露した。

優雅な所作で「瓦屋」を踊り、観客を幻想的な世界に引き込んだ知名

 知名、松田海咲喜、入里史佳が、乾流小鼓段のものより「一段」の打ち方を披露して幕を開けた。「渡りザウ 瀧落とし」に続き、首里城正殿を背景に19人の太鼓奏者が「かぎやで風 真福地のハイチョウ ションガネー」をにぎやかに演奏した。

 「胡蝶」は、「揚古見の浦」と「胡蝶の歌」の2曲構成の舞踊。宇根伸三郎が1996年に舞踊を振り付け、晩年に揚古見の浦の太鼓を創作した。宇根の遺志を継ぐ形で、知名が胡蝶の歌の太鼓を創作し、完成させた。一揚げのテンポ良い曲調に乗せて踊り手の扇子が上がる動きと、太鼓のバチを掲げる所作が時に合わさり、一瞬一瞬に目を奪われる美しさがあった。

 「松竹梅鶴亀」(宇根太鼓創作)は、3人から7人ごとに「鶴亀節」までの4曲を演奏し、「夜雨節」「浮島節」は出演者全員で演奏した。各演奏に統一感があり、歌三線の音に耳を澄まし、演奏に集中する真剣な表情に引きつけられた。「雨乞い」(知名選曲・太鼓創作)は、よく通るはやしが、神願(かみにんが)いの届いた喜びを感じさせた。

 知名は2部で「瓦屋」を踊った。透き通るような踊りで幻想的な世界に引き込んだ。

 最後は「ヒヤミカチ」「豊年」(共に知名・太鼓創作)を、知名と27人の弟子らで演奏した。気持ちを奮い立たせるような演奏と見目も華やかな所作で、コロナ禍で沈みがちな観客の心を鼓舞し、すがすがしく幕を下ろした。

 独舞を、玉城流七扇会の堀川和美師範が「天川」、賛助出演の玉城流七扇こねり会の上地美智子会主が「花風」を踊った。歌三線は花城英樹、横目大哉、和田信一、横目大通。笛は豊里美保、箏は池間北斗、胡弓は大城希里、太鼓は大底紀子、堀川久美。
 (藤村謙吾)