OKINAWA SDGs 2020年次フォーラム ピックアッププロジェクト


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬
OSP年次フォーラムで1年間の感想を話すパートナー企業・団体のメンバーら=13日、那覇市の琉球新報ホール

 

 SDGs(持続可能な開発目標)を推進するため、県内企業・団体が連携するプラットフォーム「OKINAWA SDGsプロジェクト」(OSP 事務局・琉球新報社、うむさんラボ)の2020年次フォーラムが13日、那覇市の琉球新報社で開かれた。結成から約1年間の活動を振り返り、OSPのメンバー間で生まれた、地域の社会課題を解決するプロジェクトが「ピックアッププロジェクト」として報告された。

 

 

 

ルワンダ支援プロジェクトについて語る山田果凜さん

<プロジェクト(1)>

ルワンダ支援プロジェクト 山田果凜さん 日本の潜在力を支援に

 昨年9月、ルワンダの子どもたちを貧困から救おうと、読谷村で「Tobira Cafe」をオープンした大阪大学1年の山田果凜さん(19)=同村=は、ルワンダ産の豆を使ったコーヒーを提供しながら現地の現状を伝え、支援と共感の輪を広げる多角的な支援に取り組んでいる。
 兵庫県出身で、もともと不登校だった。自分が変われたきっかけは、中学時代に訪れたインドでの体験にある。物乞いの少年と出会い、孤児院でのボランティアに関わる中で「一人でも多くの子どものため自分の命を使いたい」と決心した。
 ルワンダでの起業体験プログラムを通じ、単発のボランティアではない、付加価値を生み出す循環型の社会づくりを意識するようになった。読谷村のカフェではルワンダの輸入豆を使ったコーヒーを出しながら、ルワンダ現地の農園にも投資している。
 実践こそ最大の学び。この1年を振り返って強く感じることだという。インドでの孤児院では「日本に生まれたことを自覚しなさい」という言葉を掛けられた。「当たり前にご飯が食べられ、学校に行ける日本にはポテンシャルしかない。共感の輪を広げ、一人でも多くの子のため一生懸命活動したい」と力を込めた。

 

 

コロナ感染防止対策PR動画制作プロジェクトについて話すNPO法人エンカレッジの坂晴紀さん(右)ら

<プロジェクト(2)>

コロナ対策動画プロジェクト エンカレッジ県商工労働部 生徒が社会に触れる機会

 困窮世帯児童の学習支援に取り組むNPO法人エンカレッジと県商工労働部は、新型コロナウイルスの感染防止対策を呼び掛けるPR動画制作のプロジェクトについて報告した。
 飲食や小売、社交、観光から4店舗の協力を得ながら、客が安心して訪れることができるよう、エンカレッジの生徒たちがお店の対策を紹介する動画作りに挑戦。エンカレッジの村濱興仁さんは取り組みを通じて「子どもたちが仕事について、金銭的欲求を満たすものという考え方から、自己実現のツールと捉えるようになった」と振り返った。
 制作を依頼した県商工労働部の吉永亮太さんは「感染症をやっつけるためには行政や企業だけではできない。一丸となる意味でも大きな意義があった」と強調した。
 エンカレッジでは負の連鎖をなくすことを目指し、生活困窮世帯の子どもたちの学習支援を続けてきた。プロジェクトの報告ではエンカレッジの坂晴紀理事長も登壇し、今後の取り組みについて「生徒には勉強もしてもらうし、社会と触れ合う機会をもっとつくっていきたい」と展望したい。

 

 

プロジェクトの活動報告をする山城康代さん(左)と青木元さん

<プロジェクト(3)>

解困プロジェクト ノイズバリュー社 うるま市みどり町児童センター “やりたい”かなえ変化

 ブランディングやマーケティングを行うノイズバリュー社の青木元さんはコロナ禍で「仕事がなくなった今こそ、やりたいことをやろう」と昨年10月、子どもの貧困をテーマにしたOSPのカンファレンスにオブザーバー参加した。
 「貧困問題の根幹には自己肯定感の低下がある」と聞き、「自己肯定感を上げることなら、経営者として(私が)いつもしていること」と感じた。SNSで発信するとすぐに仲間が集まり、カンファレンスで発表した、うるま市みどり町児童センターに山城康代さんを訪ねた。
 話し合って生まれた「解困プロジェクト」は、児童センターに寄付される食材に対する子どもたちのアイデアを聞いて、子どもたちが料理するのを大人が手助けする。メニュー作り、包丁研ぎから一緒に取り組んだ。現在、スケートボードをする場所がなくて困る中学生たちとスケボー場を作るプロジェクトを他社の協力も得て進行中だ。
 山城さんは「子どもの『やりたい』を、真剣にかなえようとする大人がどれだけいるかで子どもは変わる」、青木さんは「子どもの自己肯定感を高めることで大人自身の自己肯定感も上がった」と振り返った。

 

 

自身のボランティア清掃活動などについて話をするOSP学生ボランティアの伊是名秀真さん

<プロジェクト(4)>

地球守ろう全国一斉桜マーチin沖縄 4月3日開催、参加呼び掛け

 OSP学生ボランティアの1人で、琉球大1年の伊是名秀真さんは4月3日に行う「地球を守ろう全国一斉桜マーチin沖縄」への協力を呼び掛けた。
 伊是名さんは大好きな沖縄の海がプラスチックや気候変動で危機的な状態にあることを知り、「居ても立ってもいられなくなった」という。沖縄島を一周する海岸清掃を友人たちと続けている。
 3日は「地球を守ろう」を合言葉に、気候変動対策を訴え、全国10カ所で同時マーチを行う。午後1時半に那覇市の新都心公園に集合し、国道58号周辺まで取り組む。運営資金の協力と、白か桜色の衣装での参加を呼び掛けた。

 

 

OSPの取り組みについて説明する琉球新報社の比嘉基さん

<OSP活動まとめ>

新プロジェクト19件動きだす

 OSPの活動について琉球新報社の比嘉基さんが報告した。OSPはSDGsと県の21世紀ビジョンを軸に、組織の枠を超えて世界に誇れる沖縄らしい「幸せの経済と社会」を共創しようと活動してきた。人と人が出会い、学び合い、社会課題の解決につながるプロジェクトを生み出すためのプラットフォームだ。
 パートナーは28社・団体。比嘉さんは「互いを理解することで学びが生まれ、民間ならではのスピード感で活動をつくってきた」と振り返る。琉球新報が活動を伝え、同じ志の新メンバーが随時加わった。
 具体的には3回の勉強会で地域の課題や現状、先進的な活動を学び、ワークショップでアイデアを出し合った。4回のスピンオフセミナーではパートナー以外とも連携して、OSPの外への発信や体験ワークショップ、研究者から先進研究を聞くセミナーなどを開いた。会員間では19の新プロジェクトが動きだした。
 比嘉さんは「皆さんに支えられ、一緒にわくわく楽しんで活動できた。行政やNGO、学生などとつながりをさらに広げ、2030年まで続けたい」とした。