[日曜の風・吉永みち子氏]笑えない「カオス」 鈍感な政府


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吉永みち子 作家

 4月。心弾む春とはほど遠い今年の春。明日から、感染が爆発的に増えつつある大阪、兵庫、宮城の1府2県にまん延防止等重点措置が初適用される。政府関係者もテレビも「まん防」とか言ってる。耳で「まんぼう」と聞くと、踊りのマンボかイルカの仲間のお魚を連想してしまうので、まったく緊張感がない。ま、それ以前にいささか意味不明の措置だが、緊急事態を招かないように早めに手が打てる措置だろうと理解していた。が、早めどころか慎重に考えると政府の腰は重かった。そこ、慎重にするとこ?慎重にしてると緊急事態を招くんじゃない?ってか、もはや実態はステージ4の緊急事態状態だし。

 こんな時に聖火は日本中走り、オリンピックは断固やるようだ。ワクチン接種が速やかに進めば、何とかなるのかと思ったが、最近は国の出すスケジュールを信じている人がほとんどいない。そのうちドッと届くというが、何かオリンピックのころとぶつかりそうで接種どころじゃない。先日、東京都下の狛江市が、ワクチンがひと箱も届かず、医療従事者すら未接種と嘆いていた。

 それでも自治体はワクチンが来たら一斉に摂取できるように大会場で予行演習しているのに、最近は解散総選挙がいつだ?という不埒(ふらち)な話が持ち上がっている。選挙準備で自治体はワクチンどころじゃなくなるだろうが。

 二階俊博幹事長が「野党が内閣不信任案出したら解散に打って出ろ」と元気に吠えてたし、どのタイミングで選挙したら勝てるかで政治家は頭が一杯の模様。ある政府高官いわく。「金メダル続出のオリンピック直後なら国民は大喜びで、国の無策や不祥事など忘れますから」。クソっ!忘れてなるものか!

 俯瞰(ふかん)して今のニッポンを見てみたら、マジでカオスだよ。ネットで1億回突破の「うっせぇわ!」という若者の怒りは怖くないのか?と、その高官に聞いたら「あの歌ね。言葉は荒いですが、怒りが脳内で完結してしまう系なので外には出ない」とのご意見。カオスからの出口なしか…とつぶやきつつ、以前にJR某駅の電光掲示板で本日終了を「日本は終了しました」と出しちゃった誤表示を思い出した。そのころはみんな笑っていたけど、今はもう笑えそうもない。

(作家)