囲碁をフィリピンの子どもたちに広めたい…沖縄で学び20年、マニラ出身アマ3段の女性の思い


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石の形から囲碁のルールを覚え、囲碁に情熱を注ぐフィリピン出身アマ3段の大湾ロサリンダさん=3月28日、沖縄市の松本囲碁会館(撮影時のみ、マスクを外してもらっています)

 フィリピン出身で沖縄市在住の大湾ロサリンダさん(45)は、囲碁のアマチュア3段で、高段の棋力を持つ。結婚を機に沖縄に移住し、囲碁を始めて約20年。週末になると沖縄市の松本囲碁会館(當山勝席主)で囲碁を打つ。大会に出場する機会もある。県囲碁連盟によると、囲碁の盛んな中国、台湾など東アジア以外の国の出身者で、囲碁をたしなむ人は珍しい。ロサリンダさんは「年齢に関係なく対局できるところが囲碁の魅力」と語り、将来は「フィリピンの子どもたちに囲碁を教えたい」と夢を描いている。

 ロサリンダさんはマニラ市出身。夫朝永さん(68)と結婚し、1997年に沖縄に移り住んだ。朝永さんの弟やいとこが親戚の集まる席で対局する様子をよく見掛け、囲碁に関心を持つようになり、親戚から基本を習い始めた。

 当時、日本語の習得は十分ではなかった。詰め碁のドリルを繰り返し基本ルールを身に付けた。さらに、新聞に掲載された対局の棋譜を見ながら順を追って碁石を置き、序盤の基本的な石の並べ方を学んでいった。「石の形から戦い方を覚えていった」と振り返る。

 2017年ごろから松本囲碁会館に通い始め棋力を上げている。ホテルの清掃の仕事を終えて会館に通う。県内アマトップクラスで6段の松川秀男さん(74)が師匠だ。松川さんはロサリンダさんを「勝っても負けても要因を振り返り探求する。漫然とやっている訳ではない。だから上達が早い」と評する。席主の當山さん(48)は「ロサリンダさんは、1日でも碁石の音を聞かない日があれば『落ち着かない』と言うぐらい囲碁が好きですね」と話す。

 ロサリンダさんは「囲碁はコミュニケーションを取るきっかけになる」と実感している。フィリピンへの愛着は強い。マニラでは困窮のため初等教育を受けられない子どもたちがいる。子どもたちに学ぶ機会をつくりたいと、沖縄とフィリピンを行き来し、囲碁の普及を目指している。「囲碁は集中力、先を読む力が身に付き、社会性も養える」と力強く語った。
 (高江洲洋子)