競歩に専念、全国挑戦 渡口怜 元北山高駅伝部<決意の春>


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中学からのチームメートの源河開偉(左)と練習に励む渡口怜。源河は関東学院大へ。それぞれの道を目指し、進学する=3月、糸満市の西崎陸上競技場

 昨年12月の全国高校駅伝で県高校記録を塗り替え、23年ぶりに30位台に入った男子北山。粒ぞろいのランナーに混じり異彩を放つ選手がいた。駅伝と合わせて競歩に打ち込んできた渡口怜(18)だ。コロナ禍に見舞われ、競技への気力を失いかけたが、駅伝で都大路を目指す仲間たちと励まし合う中で、競歩で全国に挑み続ける決意を固めた。この春、山梨学院大学に進学。競歩一本に絞り、新たな挑戦に突き進む。

 競歩での可能性を見いだしたのは小学から指導を受ける陸上クラブ・豊見城JRCのコーチだった。伊良波中駅伝部にいた2年生の時、けがからのリハビリに励む様子を見たコーチから「競歩に向いている」と助言を受けた。股関節の柔らかさが目に留まったという。チャレンジへの転機になった。

 高校はチームメートとともに強豪の北山へ。駅伝の傍ら競歩で全国総体を目指すと決め、2019年夏、目標の舞台に立った。結果はトップに周回遅れの惨敗。次こそはと練習に励む矢先に、コロナ禍に見舞われ全国大会の中止が決まった。

 駅伝部は12月の都大路に向けてトレーニングが続く。しかし気力は落ち、7月の県総体前にはストレスで胃を痛めるなど体調不良にもなった。駅伝メンバーのチーム内選考ライン上にいたが、競技を続けるか葛藤し続け、卒業後は就職することも考えた。

 1カ月悩んだ末の結果は「競技続行」。都大路の開催が危ぶまれても諦めない仲間たちの姿に励まされた。顧問に背中を押されたことも大きかった。肺に穴が空く病気で、駅伝のメンバー入りは遠のいたが、練習を継続。ことし1月、競歩の全国大会10キロで6位入賞し、県高新をマークした。身長182センチ。長い手足を生かしたストライドは大きな魅力だ。「大学のチームメートは強い選手ばかり。でもやるからには結果を残したい」。一度は消えかけた情熱を再び燃やし、新たな舞台でスタートを切る。(謝花史哲)

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 コロナ禍に見舞われた2020年。高校3年生は3月の選抜大会に始まり、目指すべき全国の舞台が次々と消えた。環境も変化し、競技の道を見失いそうになる中で、もう一度情熱を燃やし、今、決意の春に歩み出した選手たちがいる。諦めず一直線に夢を追う姿を紹介する。