旧大里村民の体験刊行 「南城市の沖縄戦」 出身79人証言


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瑞慶覧長敏南城市長(中央)、上原廣子教育長(右から2人目)に刊行報告をする知念昌徳さん(左から3人目)と市史編さん専門員の山城彰子さん(右端)、山内優希さん(左端)、照屋愛さん=3月26日、南城市役所

 【南城】南城市教育委員会文化課は3月31日、「南城市の沖縄戦 証言編―大里―」を刊行した。同書は3部構成で、第1部には旧大里村出身者79人の戦争体験の証言、第2部には市出身者の回顧録、第3部には1987年に旧大里村が刊行した「私の戦争体験記」から転載した17人の体験記録が収録されている。

 市教委文化課 証言朗読動画を配信

 2006年に1町3村が合併してできた南城市では、そのうち旧大里村でのみ、合併前に村史で戦争編が刊行されなかった。

 元大里村職員で、08年に市から委嘱を受けて聞き取り調査をしてきた知念昌徳さん(78)は「各字の区長や民生委員などたくさんの市民の協力のおかげで聞き取りができた。本の刊行により、大里が他の3地域と肩を並べることができて感謝している。体験者たちは旅立っていくが、さまざまな形で証言を広く伝えていってほしい。その土台となる本ができて安心した」と笑顔で語った。

 同書の編集にあたった市史編さん専門員の山城彰子さんは「コロナ禍により、体験者に直接会って証言の掲載確認を取るのが難しかったため、原稿の郵送や電話を重ねて確認を取った。それでも連絡がつかない人たちのお宅のみ訪問した」と苦労を語った。

 また文化課では、演劇グループ「演撃戦隊ジャスプレッソ」による証言の朗読動画の配信をするなどして、証言の普及を試みている。

 同書の一般販売の予定は今のところ未定だが、市立図書館や県内の公立図書館で閲覧できる。問い合わせは市文化課(電話)098(917)5374。