レスリング屋比久 5年越しの雪辱、大舞台へ 「おやじの夢果たせた」


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男子グレコローマン77キロ級準決勝で勝利し、五輪代表に決まった屋比久翔平(上)=アルマトイ(世界レスリング連合の配信動画より)

 電光掲示板が準決勝の試合終了を告げる。相手をホールドしていた両腕をほどき、ぐっと握った両拳を開くとおでこを押さえ、息を切らしながら感極まった表情を浮かべた。予選で敗れた2016年のリオ五輪から5年越しの雪辱を果たした屋比久翔平は「その時の屈辱を晴らせた気持ちが大きかった」。

 五輪出場枠を懸けた準決勝の大一番。力強く四股を踏み、引き締まった表情でサークルに入る。序盤からスタンドで押す。相手より1試合多くこなしていたが、体力の消費を感じさせない。同点で折り返したが、リオ五輪予選以降、「誰よりも練習してきた」(松本慎吾・日本協会グレコ強化委員長)と自らを追い込み「勝てるパターンを見いだせてきた」と自信を深めてきただけに焦りはなかった。

 同点の残り1分、相手の動きが目に見えて鈍り始める。持ち味のスタミナで上回る屋比久が左後ろからつかみかかり、押し倒して2点を追加。同様に2点を挙げ、突き放した。

 トップ選手だった父・保さんは五輪出場を果たせず、物心ついた頃から「あなたがオリンピックに行くんだよ」と周囲に言われ、自然と目標にしてきた。「おやじの夢を果たせたんじゃないか。これから自分の夢に向けて、金メダルを取りに行きたい」。沖縄レスリング史に新たな1ページを記した26歳。ここから刻む歴史は、自分自身の目標成就に向けた歩みと重なる。

屋比久 翔平(やびく・しょうへい) 1995年1月4日生まれ。26歳。174センチ。嘉数中―浦添工高―日体大―日体大大学院出、ALSOK。嘉数小4年生でレスリングを始め、高校時代に全国選抜と国体で優勝。2015年に全日本選手権で初優勝すると3連覇。同選手権では18年の3位をはさみ、現在2連覇中。17年から世界選手権に3年連続出場。18年ジャカルタ・アジア大会5位。昨年4月に一つ下で幼なじみの加奈子さんと結婚し、8月に長男が誕生した。