【深掘り】遺骨混入土砂「不使用」意見書 与野党の決裂回避できた背景とは


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本島南部からの土砂採取問題で、糸満市米須の鉱山を現地視察した県議会土木環境委員会の委員ら=8日、糸満市米須

 県議会土木環境委員会(瑞慶覧功委員長)で与野党各会派は「全会一致」を優先させ、意見書の文言に同意した。辺野古基地建設に南部土砂を使わないよう求める与党意見を反映した委員長案と自民・公明修正案の隔たりは大きく、9日時点では全会一致には暗雲が立ちこめていた。公明が間に入り、自公案からの「土砂」の復活、そして「南部」「辺野古」の文言を削ることで妥結点を見いだした。

 自民・公明は9日、「土砂」という箇所を「砕石および流しコーラル」に書き換えた修正案を提示した。下地康教氏(沖縄・自民)は「『土砂』には埋め立てに使えない土混じりも含まれる。的確な表現のためだ」と説明したが、与党からは「よく分からない」などと異論が相次いだ。

 「沖縄防衛局は辺野古埋め立てに砕石や流しコーラルを発注するとはしていない。これでは可決しても沖縄防衛局は無視できる」(与党幹部)と、与党は修正案を突っぱねた。

 一方の野党・自民も「南部」「辺野古」に絞った委員長案には乗れなかった。南部の既存鉱業業者の営業に影響を与えかねないからだ。自民幹部は「既に風評被害が生じている」と明かす。辺野古基地建設への影響を懸念する声もあったという。与野党ともに決裂やむなしの意見がある中、公明が間に入った。「県議会の全会一致は重い。割れると政府に誤ったメッセージになる」(公明幹部)と、与野党双方が歩み寄れる形をつくった。

 委員会後に会見を開いた自民県連の座波一政調会長は意見書では使用断念の対象を「南部」「辺野古」に限定していないと改めて強調した上で「この問題で政局化して、県民を二分するようなことになれば遺骨収集どころの話ではない」と述べた。

 一方、「南部」「辺野古」の文言を譲った形となった与党。幹部の一人は「読めば南部の土砂を辺野古に使わせるなとしていると分かる。全会一致が何よりも重い」と強調した。

 次の焦点は、遺骨が発見されたとされる場所で土砂採掘を予定する糸満市の業者への対応だ。与野党が足並みをそろえる意見書の可決が、開発の中止命令発出に影響を与えるかについて照屋義実副知事は「弁護士も含めて調整している段階だ。期限まであと数日ある。慎重に判断したい」と述べるにとどめた。
 (大嶺雅俊、當銘千絵)