「わたしたちは記念館を絶対つぶしてはならない」来場8割減の対馬丸記念館 投稿に支援広がる


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「対馬丸を二度と沈めてはいけない」と語る対馬丸記念会の高良政勝理事長=7日、那覇市若狭の対馬丸記念館

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、那覇市の対馬丸記念館で昨年度の入館者が例年に比べ約8割減少した。運営する対馬丸記念会の高良政勝理事長(80)は、記念館に込められた思いなどをつづり、新聞に投稿した。掲載された投稿記事をきっかけに、県内外から記念館へ寄付が寄せられ、支援の輪が広がっている。

 1944年に米潜水艦の魚雷攻撃で沈没した対馬丸の、犠牲者の鎮魂のほか、子どもたちに平和と命の尊さを教えることなどを目的に、2004年に同記念館が開館した。入館料や協力会費、寄付などを主な財源に運営している。新型コロナの感染拡大に伴い、昨年4月以降2度の臨時休館を余儀なくされ、来館者数も大幅に減少した。

 「わたしたちは対馬丸記念館を絶対つぶしてはならない」。高良理事長は、3月16日付の本紙論壇で運営の現状や記念館存続に対する思いを訴えた。その後、3月末までに県内外の70個人・団体から約115万円の寄付が集まった。高良理事長は「人々の関心の高さに触れ、非常に感動した」と感謝を込める。

 対馬丸は44年8月22日、米潜水艦に撃沈され、疎開のため乗船した学童を含む1484人が犠牲となった。高良理事長は生存者で、両親やきょうだい9人を失った。入館者数が以前のように戻るまで見通しはつかないが「対馬丸を二度と沈めてはいけない。記念館は慰霊の場だけでなく、歴史を継承し、平和を希求する場として存続させたい」と強い気持ちを抱いている。 (吉田早希)