<琉球料理は沖縄の宝 安次富順子>2 食材の持ち味うまく調和「アジクーター」な旨味文化


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 沖縄の味の真髄(しんずい)は、「旨味(うまみ)文化」にあると言われています。琉球料理は食材の持ち味を豚だしやかつおだしの濃厚の旨味とうまく調合し、独特のおいしさを生み出しています。今回は旨味文化と揚げ物や炒め物、煎じ物など多彩な調理法を紹介します。

味わい深い料理
 

 琉球料理は、味わい深い料理が多いのですが、あまり技巧的でなく、見てくれの華やかさやすっきりした感じはありません。豚だしやかつおだしを巧みに使い、単味ではなく、複合的に食材の持ち味をうまく調和させたアジクーターといわれる濃厚な深みのある味を生み出しています。人情味を感じさせる温かさのある料理です。

多彩な特徴

肉を主にした豪華な汁物「ヌンクウ」

 第一は豚肉文化で、「豚に始まり豚に終わる」と言われています。豚肉の部位の分け方も本土とは違い細かく分けられ、料理としてはラフテー、アシティビチ、中身のお汁、ミヌダル、耳皮さしみ、血イリチーなどのように各部位を巧みに使ったものがあります。

 第二は旨味文化で、豚だしやかつおだしなど濃厚な旨味を大切にしています。豚だしやかつおだしを丁寧に取り、旨味要素の強い美味(おい)しいだしを使うことにより、食材に濃厚な旨味が溶け込み複合的な味を生み出します。こうして生まれる味を「アジクーター」といい、沖縄の味の真髄を表しています。

 第三は油脂文化で、暑い気候ということもあり、油脂による高温処理が食べ物の保存性を高め、またエネルギー源、味と風味を高めることなどから油脂、特に昔はラードを多く使ってきました。揚げ物や炒め物が多く、チャンプルーやイリチー、多くの揚げ物が好まれています。近年沖縄県は県民の油脂の摂取量が多いことに警鐘を鳴らしています。健康を考えて油脂は上手に使いたいものです。

「医食同源」根底に

チキナーチャンプルー

 第四は医食同源の思想が根付いていることです。長年、食と真剣に向かい、食材の持つ効能をうまく取り入れた料理で長寿社会を作り上げてきました。医食同源の思想は、実だくさんの汁物やジンジムン(煎じ物)などにも表れています。

 第五はその他として、豆腐をよく使うこと、沖縄では採れない昆布をよく使うこと(豚肉との相性が良い)、近海で取れる海藻類や地元で採れる薬餌性の強い緑黄色野菜をよく使うこと、実だくさんの汁物が多いこと、塩分摂取が少ないこと、香辛料をほとんど使わないことなどが挙げられます。

 料理を調理法で分類するとご飯・麺、汁物、煮物、蒸し物、チャンプルー、タシヤー、イリチー、ンブシー、揚げ物、シンジムン(煎じ物)酢の物・あえ物、漬物などに分けられます。

三大調理法

ラッキョウチャンプルー

 沖縄の特徴的な三大調理法のチャンプルー、イリチー、ンブシーについて詳しく触れていきます。

 チャンプルーは、周囲に焼き色を付けた(アカヤチー)島豆腐と季節野菜の炒め物です。豆腐を焼くことで、くずれを防ぎ、香りがつくので美味しくなります。また、水っぽくなくからっと仕上げるのがコツです。主に使う野菜の名を付けゴーヤーチャンプルー、チキナーチャンプルーなどとなります。チャンプルーは料理用語としては、豆腐の入った炒め物のことで、単に食材を炒め合わせたものではありません。豆腐を入れないで炒めた物はタシヤーといいます。沖縄の誇らしい島豆腐があってこそチャンプルーが存在します。

 イリチーは、乾物や根菜類を主材料として炒め、だしで煮含めた料理です。主材料をしっかり炒めると味の染み込みが良くなります。具に豚三枚肉、椎茸、かまぼこ、こんにゃくなどを使い、じっくり煮含めることで、それぞれの味が一つになり旨味が凝縮されます。クーブイリチー、スンシー(メンマ)イリチーなどがあります。

衣が厚く、薄味のついた「沖縄天ぷら」

 ンブシーは、野菜を主に、豆腐や豚肉と味噌(みそ)で煮込んだ、汁物と煮物の中間的な料理です。昔は非常にポピュラーな料理でした。豆腐に味噌味が染み込むほど煮込むため味が濃く見た目も悪く、そのためかほとんど作られなくなっていました。現在は野菜を多く摂取できることから見直され、味を薄くして用いられています。ンスナバー(ふだん草)、ゴーヤー、ナーベーラー、シブイなどが使われます。

 「毎月第3木曜日は琉球料理の日」。琉球料理を食べましょう! 琉球料理を作りましょう! 琉球料理を伝えましょう!」

 (琉球料理保存協会理事長)
 


 安次富順子(あしとみ・じゅんこ)

 那覇高校、女子栄養大学家政学部卒。1966年~2016年まで新島料理学院、沖縄調理師専門学校(校長)勤務。沖縄伝統ブクブクー茶保存会会長。主な著書に「ブクブクー茶」「琉球王朝の料理と食文化」「琉球菓子」など。


ウチャワキ

保存普及目指し「伝承人」を育成

 沖縄県は、2015年以降、食文化の継承に取り組み、17年から琉球料理の保存・普及のため「琉球料理伝承人」69人を育成しました。「琉球料理伝承人」は非常に意欲的で、琉球料理の普及に努めています。

 また、19年1月、一般社団法人琉球料理保存協会の設立や、同年5月文化庁より琉球料理関連の「日本遺産」が認定されました。

 さらに「琉球料理と琉球泡盛」をユネスコの無形文化遺産への登録準備も進められてきました。