那覇市の市街地再開発事業の初事例として建設された複合施設「パレットくもじ」が、19日で開業から30年を迎える。計画策定から14年の歳月を経て、1991年に開業を迎えた当時の来館者は、1日に約10万人に上っていたという。現在県内唯一の百貨店となったデパートリウボウを核店舗に、那覇の名所として広く県民に認知されてきた一方、30年の節目は出口の見えない新型コロナウイルス感染症による経済停滞に見舞われている。関係者は「コロナ後」の巻き返しに向け、新たな魅力の創出を目指す構えだ。
パレットくもじ 開業30年
パレットくもじの建設に伴い、リウボウは那覇市松尾にあった百貨店を移転し、デパートリウボウを開店。同施設とともに歩みを進めてきた。建物の管理は那覇市出資の第3セクター「久茂地都市開発」が担い、当時は自治体が深く関与した、先進的な施設運営の在り方として注目された。
久茂地都市開発は、2013年にリウボウが那覇市保有の全株式を取得し、筆頭株主となった。デパートと合わせた一体的な施設運営に取り組み、テナント誘致や売り場改装など迅速な経営展開を目指した。
デパートリウボウは開業以来、さまざまな収益環境の変化に対応しながら存続してきた。1999年には老舗デパート山形屋が閉店、14年には三越が閉店する中でも、沖縄初進出のテナントを呼び込んだり、売り場を大改修したりと、ニーズに応じた商品展開で固定客を取り込んだ。
16年ごろから、外国人観光客の需要が高まり、売り上げを押し上げた。デパートを運営するリウボウインダストリーの2019年2月期の売上高は181億7千万円で、過去最高を記録した。
しかし、19年秋ごろから日韓関係によってインバウンド需要に陰りが出た。20年は新型コロナウイルスの影響によって売上高が大幅に減少。りゅうぎん総合研究所の調査によると、21年2月まで21カ月連続で前年の売り上げを下回っている。
2002年のサンエー那覇メインプレイスの開業を皮切りに、郊外型の大型店舗の進出が年々増え続けている。さらに、インターネット通信販売の広がりで「デパートでしか買えないもの」が徐々になくなり、全国的にも百貨店は厳しい環境に置かれている。
リウボウインダストリーの糸数剛一社長はコロナ後について、松尾時代の開業、パレットくもじへの移転時に続く「第3の創業期」と位置付ける。「リウボウにしかない接客、専門性を少しでも取り入れ、県民に来てもらえるような『わくわく感』を創出していく。ここにしかない独自性を作り出していきたい」と力を込めた。
パレットくもじは、2022年2月をめどに施設前広場に高さ13メートルの大屋根を設置する。羽ばたくことをイメージしたデザインは、新たなパレットくもじに向けて再出発の決意を込めた。久茂地都市開発の我那覇学社長は「人、モノ、情報が行き交う起点となるような施設を目指していきたい」と語った。