子の貧困対策費 国予算の内示遅れ 要求額超過原因か 関係者戸惑い


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 2021年度の沖縄振興予算に計上されている「沖縄子供の貧困緊急対策事業」について、国から県や市町村への予算内示が行われていないことが15日、関係者への取材で分かった。例年は前年度末の3月までに行われていたが、新年度に入った4月以降も実施されていない。

 政府関係者によると、自治体側からの要求額が予算額を上回ったのが原因とみられ、超過幅は数千万円規模に上るという。県は交付額が確定しないため、委託先の民間事業者と契約ができておらず、交付を見込んで事業を見切り発車させた一部自治体もある。関係者からは「本当に予算が執行されるのか不安だ」と戸惑いの声が上がっている。

 事業は、内閣府が沖縄振興予算の一環として16年度に新設し、21年度で6年目を迎える。これまでに、「子どもの居場所」の設置や、児童らに対応する支援員の配置に必要な費用の補助などを実施。16年度の10億円で開始後から増額を重ね、21年度は14億6千万円が計上されている。

 関係者によると、事業は県、市町村が実施したり、自治体から地域ごとの各事業者に委託したりする形で行われている。しかし、例年は前年度末の3月中に行われていた自治体への予算内示が、今年は実施されなかったという。

 政府関係者によると、例年は予算の範囲内で収まっていた自治体からの要求額が、本年度は数千万円規模で超過したため、査定作業がずれ込んでいるのが内示遅れの原因とみられる。政府の「働き方改革」の影響で、20年度から県が非正規職員への期末手当の支給を始めたことによる人件費増大が、要求額の増額に結び付く一因になった可能性もある。内閣府は、6月の交付決定までに事業内容の精査を進めているという。

 一方、内閣府は本紙取材に予算の内示遅れを認めた上で、「今年は査定で作業が遅れており、内示を出せる時期も未定だ」と回答した。 (黒田華、安里洋輔)