【識者談話】子の貧困支援、内閣府の裁量で決まる危うさ 島袋純・琉球大教授


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島袋 純氏

 自治体は国からの交付額を元に予算を編成し3月議会で決定する。内示が間に合わない場合、「内諾」として自治体と国で額を確認することもある。それもなしに内示が遅れることは、あってはならないことだ。

 これまでの経験から、要求額通り交付されることを前提にしている自治体もあるようだが、確約されたものはなく、要求額より減る可能性はある。その場合、補正予算や基金で調整することになるが、組み替えを前提にした予算編成はやってはならない。

 居場所や支援員など子どもの権利保障に関わる事業は本来、重要な福祉として法律や条例を定め、根拠や手続きを明確にして行われるべきだ。この「沖縄子供の貧困緊急対策事業」にはそのような制度設計がなく、手続きの体制も脆弱(ぜいじゃく)で今後の継続性は不透明だ。

 この事業は沖縄振興計画での特別措置に位置付けられ、予算額や事業の必要性の判断には内閣府の裁量が非常に大きい。その判断次第で沖縄の福祉が左右されるのは非常に危うい。事業は6年目で、この5年で重要性を認識したなら、今後の継続性のために制度的な基盤を整えるべきだ。
 (行政学)