離島土砂「多様性かく乱」 環境省、那覇空港増設で懸念 採取候補地追加 防衛の辺野古対応、矛盾


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 名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局は昨年4月に県へ提出した設計変更の承認申請書で、県内離島を土砂の採取候補地に加えている。一方、環境省は2013年、那覇空港滑走路増設事業の環境影響評価(アセスメント)に関する意見で「生物は島ごとに遺伝子レベルの違いがある可能性」を指摘し、離島からの土砂利用に関し「生物多様性にかく乱を生じさせる恐れ」があると記している。

 環境省の記述から、国自身が離島からの土砂調達について環境への悪影響を認めていたことになる。それでも離島を土砂採取地に含めようとする防衛局の姿勢は、自然環境よりも工事を優先しており問題となりそうだ。防衛局が県に埋め立ての設計変更を認めるよう申請してから1年を迎える中、審査を続ける玉城デニー知事は不承認とする構えで、環境保全の観点からも問題点を洗い出している。

 那覇空港の滑走路増設事業では、環境省が県への助言や国土交通省の照会への回答で埋め立て資材について「島しょ部特有の生物多様性の保全に十分配慮すること」を求めた。環境省によると、同じ種の生物であっても遺伝子レベルで異なる可能性がある。沖縄総合事務局によると、那覇空港の増設工事では土砂の99%以上を本島内で調達した。

 辺野古新基地建設で防衛局は当初、県外や本島北部から土砂を調達する計画だった。防衛局は設計変更で、うるま市の宮城島と宮古島市、石垣市、南大東村など離島を候補地に追加した。背景には、県外からの土砂を規制する県の「土砂条例」がある。条例の規制対象外となる県内の鉱山から調達する道を確保しておくことで、事業を円滑に進めたい考えとみられる。ただ、県外からの土砂を規制する目的は外来生物の侵入を防ぐことだ。県内であっても離島間では、生息する生物が異なっている可能性がある。玉城知事の承認がなければ実行に移せないが、仮に土砂採取予定地を広げれば、県内全域で生物への影響に懸念が生じる。

 また、糸満市や八重瀬町の「南部地区」も新たに採取予定地として防衛局が記載した。沖縄戦の激戦地で、多くの遺骨が残っているとして基地建設への使用が問題となっている。

(明真南斗)