沖縄戦の真実記載を 高校教科書の記述で声明 9.29の会


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 「9.29県民大会決議を実現させる会」は21日、2022年度から使われる高校「歴史総合」の教科書が取り上げた沖縄戦関連の記述や、文部科学省の検定に対する声明を発表した。慰霊碑を「顕彰碑」と紹介した明成社の記述を批判したほか、皮相的な記述にとどまっている教科書があることを懸念し、沖縄戦の真実を記載することを求めた。

高校歴史教科書に沖縄戦の実相を記載するよう求める9.29県民大会決議を実現させる会の(左から)中山きくさん、玉寄哲永さん、仲西春雅世話人ら=21日、県庁

 声明文は「集団自決」(強制集団死)やスパイ容疑などによる「住民虐殺」に全く触れていない教科書が、12冊中5冊あることなどを挙げ「学校教育法が高校教育の目標と明記する、『公正な批判力の育成』にかなう教科書は3冊ほどしかない」と強調した。

 一中健児之塔を「顕彰碑」、ひめゆり学徒隊を「部隊」とした記述については「戦死を美化する、または英雄視する不適切な記述」と指摘。県民が戦争に協力したかのような記述についても「沖縄戦の実相をゆがめ、『軍隊は住民を守らない』という沖縄戦最大の教訓から目をそらすものだ」と批判した。

 同会の仲西春雅世話人は「コロナ禍でなければ県民大会が開かれていた」と述べ、事態の重大さを強調した。

 会の事務局を務める高教組の仲宗根司執行委員長は、県の教育振興基本計画に琉球・沖縄史を教える必要性を盛り込むよう求めていることを明かした。

 会見には同会メンバーで、沖縄戦体験者の中山きくさん(92)や玉寄哲永さん(86)も出席した。中山さんは「沖縄戦を伝え続けなければならない」と強調。玉寄さんは自身の体験を説明し「沖縄戦をくぐり抜けた人間として、国には歴史認識を改めてもらいたい」と語った。