[日曜の風・室井佑月氏]ワクチン計画 謎だらけ、信用できる?


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室井佑月 作家

 9月までにワクチンを打てると思っている人は何人くらいいるだろう。

 アメリカの外遊から帰国した翌日の19日、菅義偉首相は官邸でのぶら下がり会見で、「(16歳以上の国民全員へのワクチンは)9月までに供給されるめどが立った」と明言した。

 バイデン大統領との会談は、「ジョー」「ヨシ」と呼び合ったことくらいしか明るいニュースにならなかった。アメリカに合わせ台湾について踏み込んだ発言をし、これから中国との関係が難しくなりそうだという余計な土産はあったけど。

 コロナ禍のこの時期、わざわざ何時間も飛行機に乗って出掛けたが、バイデン大統領との会談は、ハンバーガー1個を目の前に置かれ20分のみ。通訳の時間も入れると、話し合いは10分程度か。その10分で、お互いにどう呼び合います? なんてやってきたのだろうか。

 バイデンさんに袖にされて暇だった? 菅首相はアメリカにて、米製薬大手ファイザー社首脳と電話会談し、新型コロナウイルスワクチンの追加供給に実質合意してきたのだという。

 よく分からない。アメリカの電話はアメリカでしか通じないのか? ファイザー社が河野太郎ワクチン担当大臣ではなく、菅首相とやりとりをしたいと言ってきたのは何カ月も前だった。

 それにしても、菅首相の前出の発言は信用できるの? 20日の参院厚生労働委員会で、田村憲久厚生労働相が野党からこのことについて尋ねられ、「合意書を交わしているわけではない」と答えたのには驚いた。

 覚えているだろうか?  1月に厚生労働省は、ファイザーから年内に約7200万人分(約1億4400万回)の供給を受けると発表した。このときの基本合意では、6月末までに6000万人分(1億2000万回)を確保できるはずだった。

 しかし、合意書を交わしていなかった。なので、ワクチンの供給が遅れに遅れても、文句も言えない状況となった。

 9月に入荷するワクチンの、具体的数量を言えないのもおかしい。

(室井佑月、作家)