病床確保「もう限界」 慢性期病院 看護師、県要請に悲鳴<新型コロナと沖縄>


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県内の病院長らを集めた会議で、病床確保に協力を求める玉城デニー知事(左)=19日、南風原町

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、県は県内51の病院長らを集めた19日の会議で、最大536床のコロナ病床確保へ協力を求めた。急性期病院でコロナ病床を確保するため、コロナ以外の患者やコロナの治療を終えた患者を慢性期病院に転院させることも確認した。慢性期病院では、第2波や第3波でも急性期病院から患者を受け入れてきたが、看護師などの人員は不足し、厳しい状況に陥っている。県の方針に、慢性期病院の看護師からは「現場の問題が改善されないまま決められていく。もう限界だ」と悲痛な声が上がる。

人手不足、声届かず孤立感

 コロナ患者を受け入れているのは主に急性期病院で、それ以外にリハビリを提供する回復期病院と長期療養のための慢性期病院がある。県は現時点で536床の確保には至っていない。背景には転院がスムーズに進んでいないこともある。県の方針に沿って、非コロナ患者などの転院が進められるが、本島中部の療養型病院で働く30代看護師は「現場は目いっぱい働いて、受け入れはもう無理と言っているのに意見が聞き入れてもらえず、離職していく」と悪循環を訴える。

 看護師が働く病院では、コロナ流行後に10人以上のスタッフが辞め、看護師や介護士の数が病院の基準に達していないという。1病棟で54人の患者を診るためには「看護師6人、介護士3人が本来必要」というが、その半分で回す病棟もある。新たに看護師が入っても忙しさなどから数日で辞めてしまうという。

 患者の入浴も規則で決められた週2回から1回に減らされ、「体がただれる、と改善を訴えても『人が足りないからできない』で終わる」と嘆く。

 再びの感染拡大に伴い業務が増える中、自分たちだけが取り残されていると孤立感も深めている。「急性期で働く看護師の友人も『もう限界』と言っている。身も心もすり減らして働いても、誰が気付いてくれるのか。ホテルや観光が大変なのは分かるが、国も県も守ってくれないし、病院も守ってくれない」

 看護師の病院では、これまでの感染拡大時にも急性期病院からコロナ以外の心疾患など病状が重い患者を受け入れてきた。病院は面会を制限しているため、患者の心拍数が落ちてから家族を呼んでも最期に間に合わないことが多いという。看護師は「最期は会いたい人に会わせてあげたい、という気持ちで働いてきたが、今は断るしかない。患者さんがどんどん亡くなって、みとっていくのは心の負担が大きい」と吐露した。 (中村万里子)