走り幅跳び又吉、東京パラリンピック代表入り遠のく


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T64男子走り幅跳び 4回目の跳躍で6メートル15を跳ぶ又吉康十=25日、香川県高松市の屋島レクザムフィールド(長嶺真輝撮影)

 東京パラリンピックの代表最終選考会を兼ねる陸上のジャパンパラ大会最終日は25日、高松市の屋島レクザムフィールドで行われ、男子走り幅跳び(義足T64)にただ一人出場した又吉康十(ゼンリンDC)は6メートル15で、代表入りに最低限必要な6メートル60には届かなかった。

 男子200メートル(車いすT54)では仲泊厚志(沖縄パラ陸協)が自己ベストの27秒87で優勝した。

 女子走り幅跳び(義足T63)は代表に内定している兎沢朋美(富士通)が4メートル56のアジア新記録で優勝した。同じく内定選手の前川楓(新日本住設)は4メートル23で2位だった。

 女子走り幅跳び(義足T64)の中西麻耶(阪急交通社)は5メートル49の大会新で制し、男子走り幅跳び(義足T63)の山本篤(新日本住設)は6メートル30で優勝した。

 男子200メートル(義足T64)は大島健吾(名古屋学院大)が23秒81で勝ち、100メートルとの2冠を果たした。

◆又吉、課題見詰め成長誓う

 「お願いしますっ」。最終6回目。スタート位置についた又吉康十が、この日初めてスタンドに手拍子を求めた。目標の6メートル60に向けた最後のチャンス。拍手の力を借りて自らを鼓舞し、一気に加速した。

 義足側の左足で力強く踏み切った。結果は自身が持つ日本記録の6メートル33を下回る6メートル4。試技直後に目標に届かなかったことを悟り、掲示板の表示を確認することなく控えベンチに引き上げた。

 「仕方ないですね。こればっかりは」。悔しさを飲み込んだような笑顔で、そう言った。

 東京パラの代表入りは遠のいたが、収穫はあった。「珍しい」と語る全試技成功で、「歩幅やタイミングが安定してきた」とうなずく。新調した義足がしっくりこず、古い義足に戻した4回目で、この日最長の6メートル15を記録した。踏み切りラインの20センチ以上手前からの跳躍で着実に距離は伸びている。

 課題はメンタル面だ。6メートル60は「練習で調子いい時は跳んでいる」という距離。「本番で出せるように精神面を鍛え、助走スピードも上げて7メートルを跳べるようになりたい」。来年神戸で開催される世界選手権、そして3年後のパリパラリンピックへ。まだ競技歴4年。悔しさを糧に、伸びしろ十分の新星が次なる目標へ向かう。
 (長嶺真輝)