【記者解説】コロナ資料黒塗り 沖縄県、制度をゆがめた2つの問題


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沖縄県庁

 新型コロナウイルスの感染拡大状況に関する資料の一部を県が黒塗りにした件は二つの問題を浮き彫りにした。感染拡大の要因を示唆する資料を十分に開示しなかった県のコロナ対応の姿勢と、情報公開制度の趣旨をゆがめる運用の仕方だ。

 県が調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)に黒塗りの理由として示した県情報公開条例は、個人情報として非開示にできる内容について「氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの」「公にすることで個人の権利利益を害する恐れがあるもの」と定めている。

 本来は個人のプライバシーを守るための規定だが、これを盾に県が政策に関わる資料まで非開示にすることがまかり通れば、恣意(しい)的な運用が可能になる。行政にとって不都合な情報を隠すこともできてしまう。IPPの調査がなければ明らかにならなかった。過去の非開示事例の信ぴょう性も揺らぐ。

 県が黒塗りにした相関図は2020年7月後半から同8月にかけての感染状況を分析したもので、政府による観光支援事業「Go To トラベル」の開始時期と一致する。県は「断定できない」段階であっても検討している情報を開示し、県民とともに観光が要因の一つとなって感染が広がった可能性を考える必要があった。
 (明真南斗)