高齢者施設のIT化加速 コロナ機に、ウェブで面会・会議 市民介護相談員なは調査 


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報告書を手にする仲本しのぶ代表理事(左)、大田友子副代表理事=那覇市の琉球新報社

 新型コロナウイルスの感染拡大が長引く中、県内の高齢者を対象にする施設・事業所では、面会や会議、施設見学をオンラインで行うなどIT化を積極的に進める動きがあることが「一般社団法人市民介護相談員なは」(仲本しのぶ代表理事)のアンケートで分かった。また、マスク着用や手洗い、換気などの基本的な感染防止対策をしたところ、風邪や体調不良を訴える職員や利用者が減ったとの報告もあった。
 同法人の大田友子副代表理事は「この1年多くの我慢や犠牲を払ったが、得たものも多い。継続して取り組んでほしい」と話した。

 調査は昨年9月中旬から2月末に実施。同法人が訪問などを契約している事業所計24カ所(入所系12事業所、通所系12事業所)全てから回答を得た。うち一部はアンケート実施時点、契約を休止している。同法人は昨年2月下旬から9月上旬にも同様のアンケートを実施しており、前回との変化を考察した。

 職員会議や研修の開催状況を尋ねる設問では、人が密集しないよう延期・中止とする判断から、回数や人数を減らして実施する事業所が増えた。ウェブを活用していると答えた事業所は16カ所で、全体の約7割を占めた。面会制限が続く中、利用者や家族の不安軽減のための取り組みで、7事業所が「写真や動画を家族に送っている」と回答した。みとりが近い場合や不穏状態の利用者には、感染対策を施した上で家族との面会を許可するなど個別対応も見られた。

 感染防止対策の理解促進では、認知症の人にも繰り返し丁寧に説明すれば何かしら感じてもらえることを実感したという報告があった。同法人は「より一人一人に寄り添ったケアが見直されたことは喜ばしい」と評価した。

 利用者の変化については9~11の事業所が「認知症の悪化」「孤独、さみしさの増長」「意欲の低下」を挙げたが、全体的に「特にない」とした回答が多かった。同法人は「気持ちをうまく表現できない利用者の思いを傾聴する姿勢が大切だ」と強調した。

 今回のアンケートでは8事業所が経営支援を求めた。従来の営業活動が難しいため新規利用者が少なく、デイサービスなど通所系の利用自粛もあり稼働率が低下している。また、感染者が出た場合の休業にも不安を抱える。同法人は「飲食店と同様に何らかの補償が必要」と訴えた。

 2006年の発足後、那覇市を中心に活動してきた同法人は、相談員や活動資金の確保が難しいとの理由で3月末で活動を終えた。仲本代表理事は「施設運営の改善やサービスの質の向上に外部の視点を入れる意義は理解されてきた。高齢者の権利擁護のためこの活動を担う後継者が現れてほしい」と願いを語った。