「沖縄の歴史が残らなくなる」 公文書管理の条例、県内はゼロ


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分類・保管した歴史公文書を確認する担当者=北谷町公文書館

 行政の意思決定など歴史的な事実の記録となる「公文書」。公文書管理について明文化した「公文書管理法」は2011年4月に施行されてから10年が経過した。県内では公文書管理について、内規などに応じて文書を管理する事例がほとんどで、条例がある自治体は県を含めてゼロ。認証アーキビストの県文化振興会公文書管理課資料公開班の仲本和彦班長は「歴史が残らなくなる」と警鐘を鳴らし、公文書管理の意義を指摘する。

 「文書がどこにあるかすぐに分かる」。北谷町公文書館の浜元盛仁館長は町が保管する文書について、はっきりと語る。北谷町は主管課で文書を保管するのは1年だけで、その後は公文書館へ移管され、保存期間が満了すると、歴史公文書として保存されるか、廃棄されることになる。これらを担当しているのが同公文書館だ。

 同町は公文書管理法が施行された11年、同法施行令や公文書館などに対応した文書管理システム導入を決定。12年度から本格導入した。システム導入により、文書は作成する時点でデータベースに登録する名称で、ファイルに細分化された。「●●関連」「□□等」という言葉の使用は控えられ、文書がひとまとめにされることを回避した。文書の散逸や私物化されるようなことはなくなったという。

 これにより、情報公開請求された文書がどこにあるのか、すぐに探せるようになった。公文書管理法が掲げる「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得る」という目的にも合致する。住民にとっても利点となった。

 公文書の管理が必要なのは、同法第一条に明記されているように「現在」と「将来」の住民に対する説明責任という観点が大きい。さらに沖縄は琉球王国から琉球処分など独特な歴史的経緯をたどっているが、これらの歴史的な記録は沖縄戦でほとんどが焼失した過去がある。仲本さんは「今、やらなければ将来大変なことになりかねない」と指摘した。

 一方、条例などで明文化されていなくても、実務上は文書が作成され、保存されている場合がほとんどだ。ただ、明文化されていなければ文書が恣意(しい)的に作成されなかったり、破棄されたりする可能性もある。沖縄の歴史を後世に継承するためにも、公文書管理法をうまく活用することが求められる。
 (仲村良太)