漂流の苦しみ忘れない 対馬丸沈没75年 上原清さん(85)証言


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ

疎開そかいするひとたちを沖縄おきなわから長崎ながさきかっていた「対馬つしままる」が1944ねんがつ22にち鹿児島かごしまけん悪石島あくせきじまおきべいぐん潜水せんすいかんから攻撃こうげき沈没ちんぼつしました。乗船じょうせんしゃすう1788にんのうち1484にんめい判別はんべつしゃすう、2019ねん時点じてん)がくなりました。犠牲ぎせいしゃ半分はんぶん以上いじょうが15さい以下いかどもたちでした。44ねん当時とうじ那覇なはにあった垣花かきのはな国民こくみん学校がっこう年生ねんせい当時とうじ10さい)だった上原うえはらきよしさん(85)=うるま=は対馬つしままるから奇跡きせきてき生還せいかんしました。「平和へいわわたしたちのこころなかにある」と平和へいわねがい、当時とうじ記憶きおくかたってくれました。

幼なじみの石倉静枝さん(当時10歳)の遺影の前で語る上原清さん。一緒に遊んだこと、出航前に一緒に白い靴を買いに行ったこと、上原さんには「シーちゃん」との思い出があふれていました=那覇市若狭の対馬丸記念館

日本にほん政府せいふは1944ねんがつ沖縄おきなわどもや女性じょせい、お年寄としよりをけんがいうつす「疎開そかい」の方針ほうしんめます。米国べいこくとの戦争せんそう日本にほん劣勢れっせいになり、沖縄おきなわ戦場せんじょうになる可能かのうせいてきたのです。戦争せんそうあしまといになる住民じゅうみんけんがいうつし、日本にほんぐん食糧しょくりょう確保かくほすることが疎開そかい目的もくてきでした。

上原うえはらさんは8がつ21にち同級生どうきゅうせいらと対馬つしままる乗船じょうせんしました。22にちよる1012ふんごろ。甲板かんぱんていたとき、ドラムかんをたたくようなおとはげしい衝撃しょうげきましました。べいぐん魚雷ぎょらいけた船内せんない騒然そうぜんとし、ふねかたむはじめます。

暗闇くらやみ人々ひとびと右往左往うおうさおうするなか上級生じょうきゅうせいはっした「め」の合図あいずで、甲板かんぱんにいたひと一斉いっせいうみみました。ふたた攻撃こうげきされるかもしれない恐怖きょうふしんより「はやまなければしずむという不安ふあんおおきかった」とかえります。

対馬丸(日本郵船歴史博物館所蔵)

その上級生じょうきゅうせいにんたけのいかだでむい日間かかん漂流ひょうりゅうしました。あつ日差ひざしに荒波あらなみえとのどのかわきにくるしみます。漂流ひょうりゅうちゅうべたのはさかなぴき。おなかたされませんでしたが「べた、という事実じじつだけでちからいたがした」とぼうてませんでした。

海水かいすいみましたがからだけません。最年長さいねんちょう先輩せんぱいが「このままではんでしまう。おしっこをもう」とのひらに自分じぶん尿にょうぐちにします。上原うえはらさんも「にたくない」とのつよおもいからすこししかない尿にょうくちにしました。

漂流ひょうりゅうからいつ水平すいへいせんくろかげえました。かげちかづくにつれ「しまだ! よし」としまへの上陸じょうりくきる希望きぼうわりました。上原うえはらさんらは奄美あまみ大島おおしま大和やまとそん海岸かいがんながきました。岩場いわばあしけたときたすかった、もうしずむことはないとおもうとまわりがキラキラかがやいてえた」といます。

対馬丸記念館の内観=7月23日、那覇市若狭の対馬丸記念館(喜瀬守昭撮影)

事件じけん日本にほんぐん米国べいこくけていることをかくすため対馬つしままるについてはなすことをきんじた「かん口令こうれい」をしました。対馬つしままるでのかなしみやくるしみをかたることもゆるされず、こころきずえることはありません。上原うえはらさんはやく50ねん事件じけんかたることができませんでした。

平和へいわはどこかにあるものではない。わたしたちのこころなかにある。おもいやりのあるひとえることで、けんかや戦争せんそうはきっとなくなる」。ひとひとおもうことで平和へいわ世界せかい実現じつげんできると上原うえはらさんはしんじています。
毎年まいとしがつ22にちには那覇なは若狭わかさ慰霊いれいざくらとう」で慰霊いれいさいひらかれています。

ぶん上江洲うえず真梨子まりこ新垣あらかき梨沙りさ写真しゃしん喜瀬きせ守昭もりあき

(2019ねんがつ掲載けいさい

 

対馬つしままる記念きねんかん  

入館にゅうかんりょう大人おとな500えんちゅう高校生こうこうせい300えん小学生しょうがくせい100えん開館かいかん午前ごぜんからで入館にゅうかん午後ごご時半じはんまで。

がつ22にちのぞ毎週まいしゅう木曜もくよう年末年始ねんまつねんし休館きゅうかんわせは対馬つしままる記念きねんかん電話でんわ)098(941)3515。