記者もツーブロックにしてみた「これはゾンビ校則では」


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ツーブロックにした記者の髪型。同じ髪型の中学生が、校則違反を理由に教師から直すように指導され、丸刈りになった

 サイドの髪を短く刈り上げ、トップの髪をかぶせる髪型「ツーブロック」は、多くの学校で禁止されている。現代社会では一般化し、特異な髪型ではなくなった髪型が禁止されることで、どのような影響が出るのか。そもそも、禁止する理由は何か。読者からも疑問が寄せられた。ツーブロック禁止から、校則について考える。

<記者が体験>

 学校で禁止とされるツーブロックとはどのような髪型なのか。上地武さんが経営する美容室CouCou(クークー、那覇市首里久場川町)で、中学生が教師に「直してこい」と言われた髪型を、記者(38)で再現してもらった。

 切らないサイド部分の髪をクリップで持ち上げられ、残る部分をバリカンで刈られていく。思いのほか、高い位置まで刈り上げられた。しかし、クリップを外された髪が刈られた部分を隠し、奇抜とは思えない、むしろおしゃれ感が増す髪型に仕上がった。

 上地さんによると、校則違反を指摘され、丸刈りになった中学生は3年の男子。2年間学校に通い、校則も熟知した上で「大丈夫」と判断したが、認められなかった。丸刈りになって帰る後ろ姿はうなだれていたという。

 この日は偶然、隣の席で現役の女性教員が髪を切っていた。「この髪、校則違反ですか」と聞くと、「うーん、ツーブロックでしょ?」とすぐに反応し「難しいと思う」と感想を話してくれた。

 利用客には、生徒だけでなく教員も多い。上地さんは「実は、髪型は自由にしていいと言う先生がほとんどだ。違反かどうかの判断も難しいから『自分は何も言わない』という先生もいる」と語る。

 隣にいた現役教員は、ツーブロック禁止について取材していると告げると「頑張ってください」と笑顔を向け、去っていった。

<記者の視点>

 

 取材を通して、ツーブロックを「奇抜な髪型」と見る人はほとんどいなかった。生徒や保護者だけでなく、教員も禁止することに疑問を抱いている。この現状を踏まえると、禁止の是否を議論するより、校則が変えられない体制を問う必要性を感じる。

 教育関係者から話を聞くと、校則には、生徒をトラブルから遠ざけたいという「親心」が込められていることが分かる。だが、校則を定めた教職員は人事異動で学校を去る。誰も意義を説明できない校則のみが学校にとどまり、見直す機会もなく、子どもの人権が軽視された時代の遺物として現代の子どもを苦しめている。

 意義を失った後もさまよう様子を捉えると、「ブラック校則」ではなく「ゾンビ校則」と称した方が適切のような気がする。定期的に見直さないと、今年できた校則も、いずれゾンビ化する。

 日本が1994年に批准した子どもの権利条約は、子どもは自分に影響するすべてのことについて、自由に意見を表明できると定めている。校則見直しの機運が高まっている今こそ、この権利を保障してほしい。誰のための校則かを考えるきっかけにもなる。中学は高校へのつながり、高校は社会へのつながりを意識し、校則を定めている。ブラック校則と批判する前に、社会が子どもの権利や多様性を尊重できているかを考え、学校の変化を支援することが大事ではないだろうか。 (稲福政俊)