沖縄観光業どうする「県外企業との体力差埋めよう」「人材空洞化が成長を阻害」識者の見方


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 2020年度の入域観光客数は新型コロナウイルスの影響で過去最悪の減少となり、1988年度以来の水準となる258万3600人まで落ち込んだ。リーディング産業として県経済の成長を押し上げてきた観光業の停滞は、今後の沖縄経済の方向性にも大きな影響を与える。識者の見方を聞いた。


観光一辺倒、見直しを 獺口浩一氏(琉球大教授)

 沖縄観光は、課題はありながらも、県を挙げた取り組みが成功してきた。それに合わせて宿泊業なども多く参入してきて、客室数もかなり増やしてきた。それだけに、コロナの影響でここまで観光客が減ると、経営の根幹を揺るがす事態になっている。県外企業と地元企業の体力の差も大きい。

 観光業は沖縄にとって重要な産業の一つだ。だが、次期沖縄振興計画の策定に当たっては、沖縄は観光一辺倒ではなく、県内企業の商品やサービスを県外、海外に販路を広げて、沖縄にお金が落ちる仕組みを強化する必要がある。

 外から観光客や投資を呼び込むだけでは、沖縄に落ちる収益が低く、根付かない。県はアジアへの販路拡大の構想など戦略は掲げているが、実際にはあまり動かせていない。沖縄としてもそこに進むという方向性になっていない。

 行政が商社のような機能となり、地元企業が外に販路拡大できる土台作りをする必要がある。

 (地域・都市経済学)


人材の空洞化 懸念も 上江洲薫氏(沖縄国際大教授)

 観光産業の回復には最低でも1~2年はかかる。貸し切りバスやレンタカーの観光インフラが縮小するなど、観光客の受け入れ体制が十分でない状況になっている。ワクチンが普及して観光客が戻ってきても、急には対応できない状況となっている。

 最も懸念されるのは観光従事者の雇い止めや人材離れで人材が流出し、継続して育っていかないことだ。沖縄は観光客の消費額向上を目指して取り組んできたが、人材が空洞化すれば、今後の観光成長につながっていかない。

 バブル経済の後期を振り返ると、景気に下降の兆しが出てくると県外企業は逃げていくが、地元企業は経済動向をうまくつかめず、観光開発を進めて不良債権化する状況があった。

 域外に資金が流出するような観光では発展はない。地元にお金を落とす取り組みが重要だ。最近では県内ホテルに地元企業が投資して、苦境を支える事例がある。県はコロナ後を見据えて、ただ観光客数を増やすのではなく、質の高い観光を目指せるよう、今のうちから計画を立ててほしい。

 (観光経済論)